ネイチャーゲームインストラクター 佐々木香織さん(前編)

ネイチャーゲームを知ってから 都会の真ん中でも自然を楽しめるようになりました! TEXT by 鈴木麻由美 PHOTO by 三浦健司

ネイチャーゲームを普及する公益社団法人日本シェアリングネイチャー協会に勤めながら、自身でも生活の中でネイチャーゲームを楽しんでいる佐々木香織さん。五感をつかって自然を体験することの楽しさについてお話しいただきました。

36年前にアメリカで生まれたネイチャーゲーム

—  ネイチャーゲームとは何ですか。

佐々木♣ アメリカのナチュラリスト、ジョセフ・コーネルさんが考案した、自然をより深く体験するためのプログラムです。
36年前、彼が野外活動のインストラクターとして仕事をする中で自分なりに体得したことを「シェアリング ネイチャー ウィズ チルドレン(Sharing Nature With Children)」という本にまとめて発表。日本では、30年前に翻訳・出版されました。そのとき「シェアリングネイチャー」だと意味が伝わりにくいということで、「ネイチャーゲーム」という言葉がつくられたんです。
私が勤めている公益社団法人日本シェアリングネイチャー協会がネイチャーゲームの普及活動を行なっており、指導者養成・研修や一般向け自然体験行事などを企画・提供しています。また、ネイチャーゲームリーダーの養成講座も開催しています。

—  ネイチャーゲームの特徴は?

佐々木♣ ネイチャーゲームが日本に導入される以前は、自然体験活動のプログラムというと、自然に詳しいガイドさんが「この花は○○という名前です」「○○の特徴があります」などと、先生が生徒に教えるような関係性で行なわれるものが多かったそうです。
その点、ネイチャーゲームは異なっていて、参加者主体のプログラム。シェアをしながらいっしょに自然を体験していくという特徴があります。当時、自然体験活動の業界の中では非常に先駆的なものとして、高く評価されました。
ネイチャーゲームはいろいろなところに導入されていまして、たとえばボーイスカウトやガールスカウトなど自然体験にかかわる指導者の多くは、ネイチャーゲームのスキルを現場で活かしていたりします。

—  どのようなプログラムがあるのですか。

佐々木♣ 五感をフルにつかって、その場にある自然と直接、触れ合う。有名なものでは「大地の窓」というネイチャーゲームがあります。地面に横たわり、体の上に布団のように落ち葉をかけて、目だけを出し、大地になったかのような体験をするというものです。そうすると、地面と自分との境界線がなくなるというか、自分が自然の中に溶けだしていくというか、そういう自然との一体感を味わうことができるんです。

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小学校教員対象の研修会にて、ネイチャーゲームの説明をする佐々木さん。

たった2日間で自然の案内人になれる!

 ネイチャーゲームのリーダー養成講座とは、どんなものですか。

佐々木♣ 2日あるいは3日間の講座で、最後に簡単な検定があり、それに合格するとネイチャーゲームリーダーの資格が取得できるというものです。リーダーといっても、「先生」ではなくて、ネイチャーゲームを通した「自然案内人」と私たちは位置づけています。
すでに自然体験活動に携わっている人がより活動の幅を広げるために受講するほか、最近は保育者や教員をめざす若い人たちが多く受講しています。年齢は20代から50代以上と幅広く、男性女性ほぼ半々で、少しだけ女性が多いかな。年間約1000人の新しいリーダーが生まれていますよ。

 大変な人気ですね。

佐々木♣ いまの若い人たちは、自然体験がなく育っている人も多いので、子どもと接する立場になったときに子どもへの自然の案内の仕方がわからず、困ってしまうようです。それが、ネイチャーゲームのリーダー養成講座を受講すると、これまでまったく自然体験がなかったとしても、たった2日間でばっちり自然の案内人になれちゃうんですよ(笑)。
講座で伝えているのは、自然についての知識ではなく、自然とのかかわり方なので、いくつかのネイチャーゲームとコツを覚えれば、すぐに実践できるんです。

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ネイチャーゲーム「動物交差点」では、ゲーム仕立てで生き物の生態や抱える問題点を学ぶことができる。

自然とのかかわり方には、大きく5つのコツがある

 ネイチャーゲームで自然とかかわるコツはありますか?

佐々木♣ 大きく5つあります。1つめが「教えるよりもわかちあおう」ということで、指導者が参加者といっしょに自然を楽しみ、自然をシェアする姿勢です。
2つめが「指導者は受け身になろう」ということで、参加者の心と体の状態をよく観察し、反応に敏感になり、それを受けて、事前に立てた計画にこだわらず、臨機応変にプログラムを変更していく柔軟性です。
3つめが「チャンスを逃さない」ということで、たとえば虹が出たらその場で虹を見る活動に切り替えるなど。また、ネイチャーゲームを実践していると、参加者が輝く瞬間があるんですね。最初はやる気がなかった人が、ふと気持ちが盛り上がってきて、自然に対する気づきを言葉にしてくれる、とか。そうしたら、それをスルーしないでちゃんとキャッチして、全体の学びにつながるような問いかけをしていく。
4つめが「体験が第一、説明はあとで」。指導者が長々と説明するよりも、まず先に参加者が体験をするようにというものです。
そして、5つめが「楽しさは学ぶ力」。参加者が楽しんでいれば、その体験がポジティブな学びにつながります。そして、指導者自身が楽しいと感じることも大切です。参加者も指導者も共に楽しむことで、気づきや発見が促されます。
リーダー養成講座では、このようなスキルを実際に体験しながら学ぶことができるんです。

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自然とかかわるコツを学ぶために、実際に外へ。写真は「カモフラージュ」というネイチャーゲームを実践しているところ。

*ネイチャーゲームは、自然とより深くかかわるためのプログラム。後編では、佐々木さん自身がネイチャーゲームに出会ったきっかけや生活レベルでの楽しみ方についてお話しいただきます。

First Posted : 2015.9.7 on "clover&"

PROFILE

佐々木 香織 [ ささきかおり ]

ネイチャーゲームインストラクター。
学生時代にはデザインを学び、卒業後、設計事務所に勤務。8年ほど主にランドスケープ設計の仕事に携わった後、公益社団法人日本シェアリングネイチャー協会のアルバイトを経て、現在は正職員。広報・出版事業室長であり、ネイチャーゲームの指導者としてネイチャーゲームプログラムの現場にも立つ。
公益社団法人日本シェアリングネイチャー協会:http://www.naturegame.or.jp/

〈近況〉「ネイチャーゲームリーダー養成講座」を9月に5会場(長野・長崎・大阪・高知・埼玉)、10月に10会場にて開講。詳しくはホームページへ。


writer’s profile

鈴木麻由美 女性のライフスタイル全般および育児・保育・教育関係を中心に取材・執筆。

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