ネイチャーゲームインストラクター 佐々木香織さん(後編)

ネイチャーゲームを知ってから 都会の真ん中でも自然を楽しめるようになりました! TEXT by 鈴木麻由美 PHOTO by 三浦健司

*ネイチャーゲームは、自然とより深くかかわるためのプログラム。たった5つのコツを学ぶだけで、自然の案内人になれるそうです(前編)。

ネイチャーゲームの講座を受けたら、世界が変わった

—  佐々木さん自身は、どのようにしてネイチャーゲームと出会ったのですか。

佐々木♣ こちらの協会に来たのは12年前で、それまでは公園や河川敷などの外空間を作るランドスケープの設計事務所に勤めていたんです。
そこが地域の自然や住民を大切にした設計を得意とするところで、たとえば公園を作るときに、地域住民の希望を取り入れるために住民参加型のワークショップを開催するなどの取り組みをしていたんですね。私がそのワークショップを担当することも多かったのですが、その手法をあれこれ模索する中でネイチャーゲームというものがあると知りまして。勉強のために、さっそくリーダー養成講座を受けてみました。

—  講座を受けてみて、いかがでしたか。

佐々木♣ 驚いたことに、受けたその日から世界がまったく変わりました。当時、東京・世田谷の住宅街に住んでいたのですが、それまで駅から家までの道はただ帰るだけの通勤路。ところが、一日にして、その道の中にいろいろな自然がたくさんあることに目が向くようになったんです。
たとえば、街路樹。道を歩くアリ。じつは街路樹は毎日変化しているし、アリはレンガ敷の目地を道にして歩いているんですね。少しくぼんでいて、人間に踏まれないからかな、と思ってみたり。そんなことに気づいたら、まわりを見る目が大きく変わって。いつのまにかネイチャーゲームの世界にどっぷりつかってしまいました。

—  設計の仕事で、ネイチャーゲームを活かせましたか?

佐々木♣ そうですね。小学校のビオトープを作る仕事を受けたときは、子どもといっしょに地域の自然について考えたり観察したりする機会をつくり、その際にネイチャーゲームの手法を取り入れたりしました。五感をつかう要素を取り入れたビンゴゲームなど、ネイチャーゲームには子どもが楽しめるアクテビティがたくさんあるんです。

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設計の仕事からネイチャーゲームの世界へ。「ネイチャーゲームを知ったその日から、自然を見る目が変わりました」

子育ての日常の中でも、身近な自然を楽しむ

 プライベートで、佐々木さんがネイチャーゲームを実践することはありますか。

佐々木♣ いま新宿に住んでいるのですが、そんな都会のど真ん中でもささやかな自然があるんです。そこで、5歳の息子と日常的に自然体験をしています。
たとえば、家から保育園までは大人が歩くと5分くらいの道のりですが、そこを30分とか1時間かけて歩いたり。何か見つけてしゃがみこんだら、できるだけいっしょに付き合って観察してみるとか。
ただの葉っぱ一枚でも、五感をつかってけっこう楽しめるんです。触ってみよう、すべすべしてるね、裏はざらざらだね。匂いを嗅いでみよう、どんな匂いかな? 虫食いの穴から、向こう側をのぞいてみよう。親として息子には自然大好きな子に育ってほしいので、道草ばかりでなかなか進まない保育園の行き帰りの道は「大変」ではなく、「至福の時間」ととらえるようにしているんですよ(笑)。

 佐々木さん自身は、自然大好きな子どもでしたか。

佐々木♣ それが、そうでもなくて(笑)。うちは両親とも登山が趣味だったので、子どものころはよく山に連れて行かれました。が、私自身は自然っていいなとは思っていなくて、親に行こうと言われると「またか」と思ったり、いざ登り始めても「頂上まであと何分?」と聞いてばかりいたりして、あまり自然には積極的な子どもではなかったようです。
それでも、幼少時代にそういう経験をしたことは生きているかな。学生時代は都会での遊びの方が好きで、自然とはあまり縁のない生活をしていましたけど、社会人になってからいわゆる山ガールをやったりして、休日にアウトドアをするように変わりました。
ただ、そのころはまだネイチャーゲームを知らなかったので、電車や車で遠くに行かなければ自然はない、と思い込んでいました。こんな身近にも自然はあるのにね。

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佐々木さんは、5歳の男の子のお母さんでもある。「ネイチャーゲームのおかげで、子どもといっしょに自然を楽しむことができ、そのことが、イライラしがちな子育ての中での自分自身の癒しになっています」

たとえば、原っぱを裸足で歩いてみてほしい

 ぜひ体験してほしい身近な自然は?

佐々木♣ 小さな公園でも土や原っぱがあったら、そこを裸足で歩いてみてください。じつは、夏の地面は冷たいんです。葉っぱに水が通っているからでしょうか。逆に同じところを冬に歩くと、温かいんですよ。葉っぱの水分が抜けて、お日さまの温かさが溜まっているように感じます。あとは、ほんの1分間だけでも、目を閉じて周りから聞こえてくる自然の音を数えてみるのもいいですね。
もちろん機会があれば、身近な自然だけでなく、深くて大きな自然の中に出かけてみることもおすすめです。たとえば、どうしたって新宿にフクロウはいませんから。日常の自然、深い森や山の自然、その両方を体験することで、身近な自然を見る目も変わってきます。普段はなかなか感じられない、「私たちの暮らしと自然とのつながり」に自分で気づくことができるようになります。

 ネイチャーゲームのコツを学びたいときは?

佐々木♣ 本を読むのもいいですし、興味があればリーダー養成講座を受講されるのもおすすめです。
五感をつかって自然を楽しむという視点を持つことで、生活がより豊かに楽しくなりますよ。

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「東京にも自然はたくさんあるんです。ぜひ身近な自然に目を向けて」

First Posted : 2015.9.14 on "clover&"

PROFILE

佐々木 香織 [ ささきかおり ]

ネイチャーゲームインストラクター。
学生時代にはデザインを学び、卒業後、設計事務所に勤務。8年ほど主にランドスケープ設計の仕事に携わった後、公益社団法人日本シェアリングネイチャー協会のアルバイトを経て、現在は正職員。広報・出版事業室長であり、ネイチャーゲームの指導者としてネイチャーゲームプログラムの現場にも立つ。
公益社団法人日本シェアリングネイチャー協会:http://www.naturegame.or.jp/

〈近況〉「ネイチャーゲームリーダー養成講座」を9月に5会場(長野・長崎・大阪・高知・埼玉)、10月に10会場にて開講。詳しくはホームページへ。


writer’s profile

鈴木麻由美 女性のライフスタイル全般および育児・保育・教育関係を中心に取材・執筆。

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