カヌーインストラクター 後藤めぐみさん(前編)

川面でパドルを握れば、何もかも忘れて夢中になれる。 リバーカヤックは、最高のリフレッシュ。 TEXT by 鈴木麻由美 PHOTO by 菊池陽一郎

多摩川の上流、奥多摩の地にカヌースクール「グラビティ」を開いて18年。「好きなことを仕事にしたので、毎日が楽しい! 飽きることはありません」と語る後藤めぐみさん。リバーカヤックというマイナーだけれど奥の深いスポーツ。その楽しみ方や魅力を語っていただきました。

川下りも競技も楽しめる

—  カヤックとは、どんなスポーツですか。

後藤♣ まず、海で乗るシーカヤックと川で乗るリバーカヤックがあります。シーカヤックは、主に島などへの移動を楽しむもの。リバーカヤックは、カヤックの操作そのものを楽しむもの。
それぞれカヤックの形からして違います。グラビティで指導しているのは、リバーカヤックのほうです。

—  リバーカヤックには、レクリエーションとしての川下りのほか、速さや技を競う競技もあるそうですが、どんな技があるのですか。

後藤♣ ときどき川の水面で、ペットボトルが流れていかず、くるくる回っていることがありますよね。あんなふうに、流れの強いところで水の動きを利用して、前転したり側転したり直立したりなど、いろいろな種類の技があります。カヤックを自在に操りながら水面で遊ぶのは、とても楽しいものですよ。

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これがリバーカヤック。「初心者には、川下りができるようになることを目標にしましょう、と伝えています」

習いごとのように、続けて通ってきてほしい

 グラビティでは、どのような指導をしていますか。

後藤♣ 初心者体験クラスは、まず水の流れのないところで、ある程度思いどおりにカヌーを操りながらまっすぐ進むというのが目標。というのもリバーカヤックは、流れの速い川の中を移動できるように曲がりやすく作られているので、安定が悪く、まっすぐに進むのがむずかしいんですよ。右と左、微妙にバランスが違うだけで曲がってしまう。ですので、そこまでマスターするのに、だいたい1日かかります。
一般的なカヌースクールやカヤック体験は、たいていここまでの指導なんです。でも、うちは1日体験にとどまらず、習いごとのようなイメージで続けて通ってきてほしいな、と。そこで、初心者体験クラスから、川下りのテクニックを身につける「中級クラス」、技を磨く「フリースタイルクラス」など9段階のクラスを用意。1日単位で受付けています。

 そのほか、グラビティならではの特徴を教えてください。

後藤♣ 体の使い方からお伝えしているところですね。カヤックって、腕の曲げ伸ばしで漕いでいるようなイメージがあると思いますが、それだと腕の細い筋肉を使って自分の体重と舟の重さを動かすことになるので、すぐに疲れてしまうんです。ですので、できるだけ大きい筋肉、つまり体幹を使うようにします。そのためには体軸をしっかり保ち、それを回す動作でパドル(カヌーを漕ぐための道具)を回していかなければならない。
体軸が保たれていると姿勢が立ち上がり、体の重心が下腹、つまり体の中心に来るので、カヤックのバランスもとりやすくなります。逆に姿勢が悪いと重心が左右にずれるので、カヤックもひっくり返りやすくなるのです。グラビティでは、このような基本からきっちり教えていきます。20150706_interview_26_photo02

若くなくても? 泳げなくても、大丈夫!

 どのような人がスクールに通ってきているのですか。

後藤♣ ボリューム層としては、40歳前後の独身の男女。子育てが終わり、時間にもお金にも余裕ができた50~60代の男性も目立ちますね。
私が主宰しているためか、女性の比率は他に比べて多めで、全体の4割くらい。これまでテニスやスキーなどひととおりのスポーツを経験してきて、ほかにもっと楽しめるスポーツはないか、という感じで体験に来る方、観光地でカヤックを体験し、もっとやってみたい、という感じで漕ぎに来る方が多いようです。

 危険はないのですか。

後藤♣ 初心者体験クラスは、初心者向けの安定のいいカヤックに乗りますので、ひっくり返ることはまずありません。でも、それだと大きくて重たいので、レベルが上がるにしたがって反応のいい小さめのカヤックに乗り換えていくんですね。そうすると、ひっくり返る可能性もある。
ですので、なるべく早い段階で、ひっくり返ったときに抜け出す練習をします。もちろん危ないときは助けにいきますが、自分の身は自分で守るのが原則なので。

 では、泳げない人にはむずかしい?

後藤♣ ライフジャケットを着用しますので、水が怖くなければ泳げなくても大丈夫。運動神経に自信がなくても、年齢がいってからでも、誰でもある程度上達できるスポーツなので、気軽にチャレンジしてみてほしいです。

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カヤックほか道具一式はレンタル可能。電車で来る人のために、カヤックを預かるシステムもある。

*スポーツ好きはもちろん、これまであまりスポーツに縁がなかった人でも一度は体験してみたいリバーカヤック。後編では、後藤さんがリバーカヤックに出会ったきっかけやスクールを立ち上げるまでの経緯についてお話しいただきます。

First Posted : 2015.7.6 on "clover&"

PROFILE

後藤 めぐみ [ ごとうめぐみ]

山梨県出身。文具メーカーにグラフィックデザイナーとして勤めていたときに、リバーカヤックと出会う。その後、埼玉県秩父の長瀞でカヌースクールを手伝いながら、フリースタイル競技に参戦。アメリカ、ドイツの世界大会出場、1994年ドイツ開催プレワールド大会で女子7位。1997年多摩川上流(東京都青梅市)に「gravity(グラビティ)」を設立。
http://gravity-jp.com/

〈近況〉ブログ:グラな日々


writer’s profile

鈴木麻由美 女性のライフスタイル全般および育児・保育・教育関係を中心に取材・執筆。

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