ダイビングインストラクター 橋本雅美さん(後編)

海の中でも息ができる! 陸では味わえない解放感はストレス解消にも最適 TEXT by 萩原まみ PHOTO by 菊池陽一郎

前編では、橋本さんがスクーバ・ダイビングにハマった経緯とダイビングを楽しむための資格についてお聞きしました。趣味が高じてインストラクターに転職した橋本さん。現在はどんな日々をお過ごしなのでしょうか。

ダイビングインストラクターの出勤は朝7時

—  1日のお仕事について教えてください。

橋本♣ 出勤は朝7時。お客さんの集合時間が8時か8時半なので、それまでに人数分のエアータンクを準備して、自分たちの機材を揃えて、お客さんが電車でいらっしゃる場合は車で駅まで迎えに行きます。お客さんがショップに着いたら、ランチに何を召し上がるか決めてもらったり、ウェイトの量を聞いて準備したり、必要な書類に記入してもらったりします。それからダイビングスーツに着替えてもらって、車で海へ。

—  いよいよ潜るんですね!?

橋本♣ 堤防のあたりの拠点に車からタンクを降ろして、そこでブリーフィングを行います。海に入ったらどういう感じで潜るか、どんな生物を見に行くかという計画と打ち合わせですね。最長で1時間もしくはタンク内の空気の残圧が70とか80になったらとか、戻ってくるタイミングを決めて、それより前でも寒くなったりトイレ行きたくなったり何かトラブルがあったりしたら上に上がってください、といった取り決めを確認します。
それが終わったら各自、機材とタンクを背負って、エントリー口まで歩きます。タンクは13~15キロほどあって、海に入ってしまえば浮力で気にならなくなるんですが、陸上を移動するのが大変なんですよね。週に2回開催しているボートダイビングの場合は、陸を歩かなくても海上から直接海に入ることができます。

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1本潜り終え、笑顔で戻ってきたチーム。浅瀬でフィンを外しながら、海の様子や遭遇した生物について熱っぽく語り合う。2本潜る場合は堤防の拠点に戻り、トイレに行ったりお茶を飲んだりして約1時間休憩を取り、新しいタンクを背負ってまたエントリー口に戻る。

夏は繁忙期、休みは冬に「がっつり」

 休憩1時間を挟んで2本潜るとして、約2~3時間でショップに戻ってくるわけですね。その後はどんな仕事があるんでしょう?

橋本♣ 機材を洗って、シャワー浴びて着替えて、お客さんにランチをお出しして、ログ付けという作業をします。どんなお魚を見ましたとか、その日の記録ですね。いっしょに潜った人とログブックを交換してコメントを書き合ったり、店のブログ用にお客さんの撮った写真をもらったり。お客さんはだいたい15時半から17時ぐらいには帰られるので、更衣室などを掃除して、ブログを更新したり、メール返信したりします。あとは翌日分のレンタル機材を揃えたり、会員のお客さんからお預かりしている機材を出したりといった準備ですね。
帰宅時間はお客さんの数によってまちまちで、早いと17~18時、遅いと19時ぐらい。夏はだいたい毎日、そんな感じです。

 休日は決まっているんですか?

橋本♣ いえ、台風で潜れないときに休んだり、お客さんの数が少なければ順番に休みを取ったり。夏は繁忙期なのでまとめて働いて、その代わり冬にがっつり休みます。冬は週3日だけ出勤とか、1人だけ出勤して他のスタッフは休みとか。年間で数えると休日の日数は一般企業とそんなに変わらないと思います。

 季節によって収入が変わったりも?

橋本♣ お給料は定額です。月給は前職に比べると多少減ったかもしれません。でも、プライベートで潜るときにショップのタンクを使わせてもらえるとか、得をしていることも多いんですよ(笑)。

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海から戻ったら、海水を洗い流すための水槽でスーツや機材を洗って、干す。チューブのようなものはタンクから空気を吸うためのレギュレータ。命綱とも言えるレギュレータを橋本さんは自分の好きな紫色でカスタマイズしている。

目の前を魚が泳ぐ感動。ぜひ体験を!

 改めてダイビングの魅力について教えてください。

橋本♣ 水中で魚が目の前を泳いでるのを見ると感動しますよ。特に、普段食卓に上がるものがいるとテンション上がります(笑)。葉山だと高級魚のイシダイ、サザエ、タコ、伊勢海老、アオリイカなどに会えますね。動物の赤ちゃんってかわいいじゃないですか。小さいお魚、幼魚もすごくかわいいんです。
毎日潜っている葉山でさえ、何、これ、初めて見た!っていう生物がいて、新鮮な驚きと発見があります。海の中にも四季があって、天皇陛下が研究なさっていたチャガラとかキヌバリというハゼは1年中いるんですが、求愛して、産卵して、赤ちゃんが出てきてという様子を1年を通して見ることができるんですよ。
仕事以外で潜るときは無駄に砂地で寝ころがってみたりもしますね。解放感もあるし、陸では味わえない無重力感がすごいんですよ。ただ浮いてるだけでいいっていうダイバーの友達もいるぐらいです。水中にいるとストレス発散できます。

お客さんはどんな方が多いですか?

橋本♣ うちは30~40代のお客さんが中心ですね。仕事が落ち着いてから始めるという私と同じパターンの人が多くて、女性の方もたくさんいらっしゃいます。私はひとりで始めたんですが、潜っているうちに仲間ができて、輪が広がっていきました。いっしょにライセンス講習を受けた人とは今も遊びに行ったり、飲みに行ったりしてますよ。

とても興味がわいてきましたが、機材もいろいろ必要で、ちょっとハードルが高いような……。

橋本♣ まずは体験してみるといいんじゃないでしょうか。やってみないことには楽しいと思えるか、海のなかでどういうことをやるのか、わからないですよね。NANAでは機材レンタルもすべて込みで1万円で体験できます。うちは少人数制で最大でも1チーム4人なんですが、体験コースは2人までなので、行き届いた指導ができますし、ゆっくりとご自分のペースで楽しんでいただけると思います。

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海から上がった後はカジュアルなかっこうでテキパキと仕事をこなす橋本さん。 「体が動く限りは潜っていたいので、雇っていただける間はインストラクターとして働き続けたいです。海外ツアーのボートダイビングだと80歳ぐらいの方も参加なさっているので、素敵だなぁと憧れます。年を取っても潜っていられたら最高ですね」

First Posted : 2015.6.29 on "clover&"

PROFILE

橋本 雅美 [ はしもとまさみ ]

大学(体育学科)で体育教員免許(中学・高校)を取得、卒業後は一般企業に勤務。2009年に趣味として始めたダイビングに魅了され、2012年から葉山のダイビングショップNANAでインストラクターとして働いている。

ダイビングショップNANA
未経験者の「体験ダイビング」から上級者向けまで、幅広く対応するダイビングショップ。葉山を中心に、生物相豊かな相模湾で複数のスポットを案内。4名までの完全少人数制できめ細かい対応も好評。
http://www.nana-dive.net/


writer’s profile

萩原まみ 食、ジェンダー、セクシュアリティ、ムーミン、イケメン俳優が得意ジャンル。『ムーミンマグ物語』(講談社)の文章担当。

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