＊子連れでも本格的なイタリアンが楽しめる「il sole（イルソーレ）」（前編）。いろいろな縁が重なって、今年はさらなる飛躍が見込めそうです。
きっかけは、「子どもがいても外食したい！」
— 「親子カフェ」をつくろうと思ったのは、どうしてですか。
辻♣ ホテル西洋銀座で、イタリアンのシェフとして働いていた夫はもともと、いずれ独立したいという夢がありました。リサーチも兼ねて夫婦で食べ歩きなどしていたのですが、8年前に長男が生まれると、なかなか外食がしにくくなって。ベビーカーで入れない店も多いし、もし私たちが店をつくるなら子連れで楽しめる店にしたいね、という思いが生まれました。
— お店をつくるうえで、どんなご苦労がありましたか。
辻♣ まず、場所探しが大変でした。20～30坪のスペースならたくさんあるのですが、キッズスペースを大きくとることを考えると50坪は欲しい。ようやくここを見つけたのですが、元は保育園だったそうですよ。
ベビーカーでいらっしゃる方のことを考えると、2階はきびしいのですが、仕方なかった。そのかわり、1階の入り口にインターホンを備え、ベビーカーの方はそれを押していただくと、スタッフがベビーカーを2階まで運んでいます。うちのスタッフは1日に何十回もベビーカーの上げ下ろしをしていますよ。
— 杉並区という場所を選んだのは？
辻♣ 杉並区には子育て支援の一環で、こうした子育て支援事業施設を利用するのに使える「子育て応援券」というサービスがあるんです。それが集客の後押しになると思いました。
でも、いちばんは、自宅から近かったからです。夫がシェフ、私がマネジメントを担当しているので、ここなら子育てをしながらできるかな、と。
いま上の子が8歳、下の子が6歳。オープンしたときは下の子が生まれたばかり、いま思えば大変でした。その子がまもなく幼稚園を卒園するので、ようやく送り迎えから解放されるのですが、いままでは毎日、自宅と店と園を行ったり来たりしていました。実は今日も、さっき幼稚園にお迎えに行って戻ってきたところなんです。
本当においしい店だから支持される
— 親子カフェは、経営がむずかしいと聞きました。
辻♣ ええ、「親子カフェは3年でつぶれる」と言われています。実際、店をつくる前にいくつも見にいきましたが、いまもある店はほとんどありません。
— 何がむずかしいのでしょう。
辻♣ まずは「親子」ということで、ほかの店に比べてターゲットが狭いことですね。そして、お子さまが大きくなってしまうと足を運んでいただけなくなってしまう。どんどん新しいお客さまを開拓していかないとなりません。
また、みなさん食事だけでなく遊びに来る感覚でいらっしゃいますから、2時間、3時間と長居され、回転が見込めないこともあります。それでも、子育て世帯の方が対象なので、単価を高くするわけにはいかず、採算がとれにくいんです。
さらに、天候や流行り風邪にすごく左右されやすいということもあります。インフルエンザなどが流行ると、予約で満席になっていても、あっという間に半分はキャンセルになってしまう。雨や雪でも、当然のように「こんなお天気なので……」と電話がかかってきますしね。
— それでも「il sole」は順調ですね。なぜだと思いますか。
辻♣ 料理に力を入れているから。本格的なイタリアンが食べられ、しかもそれがおいしいからだと自負しています。もちろん、ワインなどお酒も楽しめます。いまは女性の方もかなり飲まれますから、そのあたりを充実させておくことは大事ですね（笑）。
実は、「親子カフェ」というと、遊びの場としてのご案内が中心で、料理はそれなり、というところも多いんです。レンジで温めたような料理を出すところも少なくありません。
でも、おいしくないと、どうしても「また行こう」というふうにならない。お母さまはよくても、お父さまやおじいちゃまおばあちゃまがよい顔をしない、ということもあるようです。
アレルギー対応から生まれた縁を広げたい
— 今後、どのようなチャレンジを考えていますか。
辻♣ アレルギー対応の勉強をしているうちに、「NPO法人 アレルギーっこパパの会」とご縁ができまして、いまコラボでの活動をいろいろ企画しています。
たとえば、アレルギー対応をどのようにしていこうか悩んでいるホテルや旅館、レストランは多いので、その相談業務とか、アレルギーのある人が予約しやすいようなシステムを提供しようとか。親子カフェ内だけの活動にとどまらず、これからは外に向かって活動を広げていきたいなと期待して取り組んでいます。
— 下のお子さまが卒園・新入学で子育ても一段落。ますます仕事にも力が入りそうですね。今日は楽しいお話をありがとうございました。
First Posted : 2015.3.9 on "clover&"
