パン職人 福岡由佳理さん(前編)

ふんわりしあわせ。 母娘が自宅で営むホームメイドベーカリー! TEXT by 萩原まみ PHOTO by 菊池陽一郎

大泉学園駅(東京都練馬区)から徒歩10分ほどの閑静な住宅街で、ひそかな人気を集めている小さなパン屋さん「うーぱん」。二世帯住宅の空きスペースをそのまま活かし、パン教室も開催しています。具材まですべて手作りのパンを焼くのは娘の福岡由佳理さん、販売担当は母の晴美さん。今回はおふたりにお話をうかがいました。

パン作りとの運命の出会い

— パン職人になろうと思ったきっかけは?

福岡♣ 20歳の頃、自分が何をやりたいのか、模索していた時期がありました。料理は好きだったので、料理とかケーキを基礎からちゃんと習ってみたいと思って、料理を習いに行くはずが体験でパン作りを勧められて断れなくて(笑)。パンを焼くのは初めてだったんですけど、これだ!って思いました。

— パン作りのどこがそんなに魅力だったんでしょう?

福岡♣ 最初は何をやっていいかまったくわからなくて、先生に教わりながら、たぶん、これ、私に合ってるなって思ったんですよね。材料を細かく正確に量るのも好きでしたし、こねる感覚も楽しくて、これを仕事にしたい!って。

— その夢を実現させるためにどんなことをなさったんですか?

福岡♣ 3年間、パン作りを習いに行って、家でもひたすらパンを作っていました。実は元々はご飯派で、パンはそんなに好きでもなかったんですけど(笑)、自分が作るようになってから食べるのも大好きになりました。

— そして、2011年に「うーぱん」を開店。

福岡♣ 最初は販売よりもパン教室をやりたかったんです。でも、どんなパンが作れるのかわからないと生徒さんが来てくれないと思ったので、パンの販売をしながら、お教室もやってますよ、という形でスタートしました。販売のほうが忙しくなってしまって、一時期、教室はお休みしていたんですが、昨年秋から再開しました。

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看板を目印に一軒家の裏にまわり込むと、小さなパン屋さんが出現! お客さんは販売担当の晴美さんとの会話を楽しみながらパンを選んでいく。

二世帯住宅がそのままパン屋さんに!?

— 一軒家にパン販売スペースを設けるというユニークなお店ですが、当初からご自宅をショップにするご予定だったんですか?

福岡♣ ここは二世帯住宅で、1階には祖母が住んでいたのですが、建て直してから亡くなって、すっからかんになってしまったんです。私と両親は2階に住んでいるので、1階部分を空けておくのがもったいなくて。キッチンもあって、お教室にちょうどいいスペースもある。両親もいいと言ってくれたので、これはチャンスだ!と思いました。

— お店を始めるためのリフォームにはお幾らぐらいかかりました?

福岡♣ リフォームはほとんど必要がなくて、保健所の許可を取って、流しを新設しただけです。オーブンなどの設備投資と、型や小物などを含めて、開店資金は100万円ぐらいでしょうか。アルバイトをしてお金を貯めました。

— 軌道に乗るまでにはどんな苦労がありましたか?

福岡♣ お店での修業経験がなかったので、どれぐらいの時間でどれぐらいの量を作ればいいのかわからなくて、ペースをつかむのに半年ぐらいかかりました。今でもあっぷあっぷしてますけど(笑)。
福岡(晴美)♣ 最初のうちはどうやっていいかわからない状態で大変そうでしたけど、今はすっかり頼もしくなって、娘が引っ張っていってくれていますよ。
福岡♣ 最初のうちは大量に残って、近所の友達にあげたり、父の会社に持っていってもらったり、自分たちで食べる用に冷凍したりなんてこともありましたね。最近は大雪の日などをのぞけば、そんなにびっくりするほど残ることはなくなりました。

「仕事が終わったら2階の自分の部屋でリラックス。お気に入りのものを集めた自慢の部屋なんです」という由佳理さん。キャンドルを集めているほか、ピンクのもの、ふわっとしたものが好きだそう。
「仕事が終わったら2階の自分の部屋でリラックス。お気に入りのものを集めた自慢の部屋なんです」という由佳理さん。キャンドルを集めているほか、ピンクのもの、ふわっとしたものが好きだそう。

仲良し母娘ふたりで店をきりもり

— オープン時から、娘の由佳理さんがパン作り、お母さんの晴美さんが販売というスタイルだったんですか?

福岡♣ はい、ずっとふたりでやっています。人気の看板娘の母に店番を任せて(笑)、私はずっと引きこもってパンを作ってます。

— 母と娘、気心が知れていてやりやすい半面、やりづらいこともあるのでは?

福岡♣ 私は特にないですね。何でも言えますし、甘えさせてもらっています。常に時間に追われているので、カッカカッカしちゃうことも、特に最初のうちはあったんですど、母はいつもどっしりと落ち着いてるんですよ。

福岡(晴美)♣ 腹が立つこともあるけどね(笑)。私はこの年になると、よそで働かせてくれるところもあまりないだろうから、よかったかなって思いますよ。

— 晴美さんはこれまで販売や接客のご経験は?

福岡(晴美)♣ 経験はないけど、好きかな。いいお客さんばっかりで、楽しいです。

— パン作りは由佳理さんがおひとりで?

福岡♣ はい、母に頼むのはリンゴを切ってもらうとか、そういうお手伝いぐらいですね。
福岡(晴美)♣ 私は適当な性格だから、細かく材料を量ったりできません(笑)。

— パン教室は晴美さんもお手伝いなさるのでしょうか?

福岡♣ ふたりでやっています。母は助手みたいな感じですけど、いてくれるだけで心強いです。初めての生徒さんは母が先生だと勘違いして、母に向かって丁寧にご挨拶してくださることも(笑)。販売でお客さんと接しているのも母なので、母が作ってると思っている方も多いんですよ。

「うーぱん」を始めてからも、「休みの日にいっしょに遊びに行くこともあります」(由佳理さん)というぐらい仲良しのおふたり。
「うーぱん」を始めてからも、「休みの日にいっしょに遊びに行くこともあります」(由佳理さん)というぐらい仲良しのおふたり。

*パン屋さんは早起きで、体力勝負!? 後編では、大変なこととうれしいことについてうかがいます。

First Posted : 2015.1.19 on "clover&"

PROFILE

福岡 由佳理  [ふくおか ゆかり]

パン職人。
3年間、パン作りを学び、2011年12月1日、東大泉(東京都練馬区)の自宅1階に小さなパン屋さん「うーぱん」を開店。月に2~3回、月替わりのパンを教える手ごねパン教室も開催している。
http://u-pan.jp/

〈近況〉パン教室の日程はうーぱんFacebookページへ。


writer’s profile

萩原まみ 食、ジェンダー、セクシュアリティ、ムーミン、イケメン俳優が得意ジャンル。『ムーミンマグ物語』(講談社)の文章担当。

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