ランニングコーチ 江田良子さん(後編)

そんな思いで指導をしています ランニングは、仲間とともに走ることを楽しんで! TEXT by 鈴木麻由美 PHOTO by 菊池陽一郎

*「これから走ろうという人は、できれば朝走ってほしい」と江田さん(前編)。ご自身も楽しみながら、毎朝、走っているそうです。

私にとって、走ることは自己表現

— 江田さんご自身は、プライベートではいつ、どのくらい走っているのですか。

江田♣ 朝、5時に起きて1時間くらい走っています。練習会でみなさんを引っ張っていく必要がありますし、自分でもレースに出たりしているので、走れるうちはできるだけ走っておこうと思っています。

— 子どものころから、走ることが好きだったのですか。

江田♣ 好きというか、走ることが自分を伸ばせるものだった、という感覚です。自己表現というか、仕事というか。
公立の小学校でしたが部活が盛んな学校で、私は運動が得意だったので春は陸上部に所属して陸上の大会へ、夏は水泳部に所属して水泳の大会へ、みたいな感じで、いろいろなスポーツをやっていました。その中で、やはり走ることがいちばん得意だということで、中学のときに陸上部に入り、そこから長距離を始めました。
今思えば、それがよかったのですが、私は中学でも高校でもそれほどレベルの高くないところでやっていたんです。大学は陸上で推薦をいただいて入学したんですけど、そんなにガシガシやってはいなかったです。その後も、実業団から声をかけていただいたものの、たまたま下のほうで入ったという感じで。
でも、そんなふうにゆるゆるとやっていたからこそ、長く続けられたのかな、と。はじめからガシガシやっていたら、たぶんこんなにもたなかった。

— 実業団以降、競技生活はいかがでしたか。

江田♣ 大学卒業後、みずほ銀行に入り、そこで8年走りました。お金をいただいて走っている以上、結果を出さないと意味がないわけで、それがプレッシャーでしたね。一方で、結果を出せばその分、待遇が上がったり、ボーナスの額が変わったりするので、やればやっただけ評価されるというシステムは、やりがいを感じられて好きでした。
大変だったことといえば、健康管理、体重管理ですね。常にダイエッターだったと思います。今なら、食べることも大切だとわかるのですが、当時はあまり情報もなく。ひたすら食べる量を減らしたり油を減らしたりして、とにかく体を軽くしようと努力していました。

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いまは純粋に、走ることが好き

— 引退を決意されたきっかけは?

江田♣ 私は故障が多くて、フルマラソン1本走るたびに、3カ月とか1カ月とか走れなくなってしまう繰り返しだったんですよ。それで8年走って、もう走ることは十分に満喫したからいいや、と引退を意識し始めたころ、みずほ銀行の陸上部が廃部になるという話が出たんです。
部員全員でヤマダ電機に移ることになり、当時キャプテンをしていたので、今抜けるわけにはいかないな、と。そこで引退を1年先延ばしにしました。ところが、最後のつもりの名古屋国際女子マラソンで3位に入賞し、世界陸上選手権女子マラソン代表に選出されました。私にとっては、競技生活最後のおまけというかご褒美というか。それが終わって、すぐに引退したのです。
とまあ、いい感じでやめたので、今でも走ることにかかわっていられるのだと思います。同じチームだった仲間で、もう走れないとか、やめてからは全然走っていない、とかいう子もたくさんいるので。その点、私は競技生活をやめた後のほうがむしろ、走ることが好きになりました。

— 引退後、どのような経緯でRUN塾を主宰することになったのですか。

江田♣ 引退後、ちょうど1年後に一人目の子どもが生まれました。その子が1歳になったころ、そろそろ何か動きたいなと思ったのですが、当時はまだランニングスクールなど一般的ではなかったので、どうしたらいいかわからなくて。
埼玉に住んでいるのですが、埼玉はサッカーが盛んな土地。サッカーチーム関連で何かできることはないかな、と探すうち、浦和レッズのスポーツクラブ・レッズランドでランニングスクールをやらせていただけることになりました。その後、スポーツエードジャパンというスポーツ関連のNPO団体がランニングスクールを始めるということでそちらに移り、いまはそこから独立した形でRUN塾を開講しています。

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競技生活を引退し、プレッシャーからも解放されて、「いま、純粋に走ることが楽しい!」

ただ走るだけでなく、楽しみも用意

— いま走っている方、これから走りたいという方に、伝えたいことはありますか。

江田♣ 走ることが好きな方って、つい無理をしがちなんですね。かつての私は、健康のためどころか、疲労骨折であちこち骨を折ったり、内臓を悪くしたりと体を壊してまで走っていました。でも、それは仕事だったから。
いま、趣味として走っているみなさんは、絶対に無理することなく、楽しんで走ってほしいと思っています。それこそ、具合を悪くしたり、仕事や家事、育児に支障をきたすなんてことになったらおかしな話だし、優先順位は忘れないでほしい。
だから、私はRUN塾でも、楽しみの要素をたくさん入れるようにしているんです。たとえば、夏は山を走ったあとにバーベキュー場を確保しておいてみんなでバーベキューをして盛り上がったり、秋は「遠足ね」と言って、大宮のパン屋さんを走ってめぐったり。年末はエンドレスのリレーをやったあとに忘年会とか。
それと、大切にしてほしいのは仲間同士のつながりですね。今日も、いくつかのグループに分けて走っていて、早いほうのグループが終わっても先に上がるのではなく、遅いほうのグループについて走ってあげていました。「自分は終わったし、寒いから早く上がりたい」とか、そんなふうに思ってほしくないんです。
大人になってから、仲間同士声をかけあって、いっしょに何かを楽しむって、なかなかないと思うんですね。だからこそ、RUN塾ではそういった仲間同士のつながりを大事にしたい。みなさんにもその思いは伝えています。

— 江田さんご自身は、今後、走ることをどのように楽しんでいく予定ですか。

江田♣ 先日、はじめてトライアスロンに挑戦し、とても楽しかったんです。いまは、それをもう少し深めていきたいな、と。

— 走るだけでなく、今後はトライアスロンでバイクや水泳にもチャレンジされるのですね。今日は楽しいお話をどうもありがとうございました。

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会員とのコミュニケーションも楽しみのひとつ。「年齢も性別も関係なく、ただ走ることが好き、という気持ちでつながっていられることがうれしいですね」

First Posted : 2014.11.4 on "clover&"

PROFILE

江田良子 [えだ りょうこ]

ランニングコーチ。
城西短大を卒業後、みずほ銀行(当時、富士銀行)陸上部に入部し、その後ヤマダ電機陸上部へ移籍。1998年、初マラソンのベルリンマラソンで8位入賞。 以後6回目のフルマラソンとなる2005名古屋国際女子マラソンで自己ベストの2時間24分54秒、3位となり同年のヘルシンキ世界陸上選手権女子マラソン日本代表となる。2005年現役引退。現在はランニングスクール・RUN塾で塾長を務める。
http://www.runjuku.com


writer’s profile

鈴木麻由美 女性のライフスタイル全般および育児・保育・教育関係を中心に取材・執筆。

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