*子どものころからのキモノ好きが高じて、「玉のり」を立ち上げ、13年(前編)。最近では外国に生地を探しに行くなど、ますます活動の幅を広げている「玉のり」です。
洋服を着る感覚でキモノを着てOK!
— 当時から、斬新な色柄の帯を作っていたのですね。生地はどのように探すのですか。
ハシヅメ♣ 帯って基本的には、着るものというよりはアクセサリーだと思うんです。だから、インパクトが強ければ強いほど、いいんじゃないか、と。
それで最近は、生地はキモノの生地にこだわらず、いろいろなところで探しています。それこそ、生地があると聞けば、外国でもどこでも出かけていきますよ。スペイン、イギリス、それに北京にも行きました。インテリアファブリックの店などで探すと、帯にぴったりの生地がよく見つかるんです。というのも、インテリアファブリックは、遠目に見ることが前提なので、柄が大きく大胆なものが多いんですね。それって、帯とコンセプトがいっしょなんです。
— キモノと帯の合わせ方がよくわからない人は、多いようです。合わせ方にコツはありますか。
ハシヅメ♣ たしかに、柄オン柄の世界なので、むずかしく感じられがちですよね。でも、自分の中で一定の法則を納得すると、意外に簡単にしっくりなじみます。キモノって頭の中で、コーディネートして、コレとアレはとても合わないと思っても、実際に乗せてみると意外に大丈夫、ということが多いんです。
たとえば、キモノの柄が格子など直線的なもののときは、帯の柄は曲線。キモノが花柄など曲線的な柄のときは、帯は幾何学的な柄など直線的なものをいれると、しっくりとまとまります。要は、対比をつける。
色もそうですね。コントラストをつけると、すっきり。もちろん、はんなり淡い色の着物に淡い色の帯でエレガントにまとめるというのもアリですが。
あまりむずかしく考えず、自分の感覚でいいと思うんです。いつも着ている洋服を選ぶ感覚で着てもいいんじゃないかな。
どうしてもむずかしい人は、まず無地のキモノを1枚持つことをおすすめしますね。そして、帯で遊ぶ。無地なら基本、どんな帯でも似合いますから。
キモノに年齢関係なし! かえって「お姉さま」のほうがモテることも
— キモノを着慣れていないと、「この年でこのキモノは派手なんじゃないか」と心配になることもあります。
ハシヅメ♣ 年齢は気にしなくていいですよ。首から数字をぶらさげてるわけじゃないんですから(笑)。着たいキモノ、自分の気分が上がる色柄を選べばいいと思います。洋服の感覚からか、みなさんどちらかというと渋い色のキモノを選びがちなんですが、キモノの場合はできるだけ明るい色のものを選ばれたほうが、華やかな感じになっていいですよ。
キモノって形に流行がないので、いつまでも古くならないのがとてもいい。だから、お母さまのでもおばあさまのでも着られるんですけど、やっぱり柄とかは、若干流行があるんですよね。だから、キモノも帯も両方ともお母さまのを着てしまうと、昭和のおばさんができあがる恐れがあります。そこで、古いキモノを着たときは帯を新しく、帯が古いときはキモノを新しくすると、どちらともが引き立てあって古臭い感じにならない。これはポイントとして覚えておくとよいと思います。
— キモノを着ると、どんなよいことがありますか。
ハシヅメ♣ 「玉のり」のお客さまは、洋服ではひと通りの流行を体験してきて、この先何か面白いことないかな、と思い、「あ、そういえばキモノ」という感じでこの世界に入っていらっしゃる40代以上のお姉さま方が多いんです。
洋服だとどうしても、若い子の勢いには勝てませんよね。でも、そこでキモノを着ると、ダントツ目立ちます。へたすると、お姉さまのほうがモテたりしますので(笑)。
もちろん、外国や外国人が集まるパーティなどでも、キモノってすごく目立ちます。好奇心もあるんでしょうけど、ものすごく注目されますね。その味をしめたお姉さま方が、「ここ一番のときはキモノで行くわ!」と。
— いまハシヅメさんご自身は、どんなときにキモノを着ていますか。
ハシヅメ♣ いまは仕事で出かけるときは全部キモノです。あとは食事会とか買い物とか、遊びに行くとか、まわりの友だちが洋服でも、かまわずキモノで出かけますね。
— 長く着ていても疲れませんか。
ハシヅメ♣ なぜキモノが苦しいというイメージがあるかと言うと、これまでキモノを着たのは特別なときで、写真を撮って残したりしましたよね。だから、美容院などでは着崩れをしないことをメインに着付けてくれていたんです。
そうすると、おのずと締めるところがきつくなる。長く着ていると痛くなったりします、当然。私自身、自分の結婚式のとき、肝臓が痛くなりましたもん(笑)。
それが、自分で着付けるようになり、ここを締めると痛いぞ、ということがわかってくると、紐を減らしたり、ゆるめに締めたり工夫できるようになってくるんですよ。
いちばん大事なのは、帯を締めすぎないことですね。ただし、腰紐だけはきつく締める。おへそのちょっと下、ここはいくらきつく締めても苦しくないんです。ここさえ締めれば、あとは上から押さえるように着ていけば、苦しくありませんし、大きく着崩れるということもありません。
— 子どもに着付けてやりたいというお母さんに、アドバイスをお願いします。
ハシヅメ♣ 子どものキモノは、紐など補助的なものがついていると思うので、きつくしめないで大丈夫。あと、いちばんは、履物で痛い思いをさせないということを心がけてほしいですね。これで懲りると、キモノが嫌いになってしまいます。浴衣の場合、子どもならそれこそビーチサンダルでもいいと思うんですよ。細かいことにこだわるより、まずは気軽にキモノを着るというように間口を広げてほしいんです。
中高生になって、お祭りや花火大会などで浴衣を着たいなんていう場合、量販店に数千円台で全セットそろうようなものも売っていますから、はじめはそんなのを楽しむところから始めればいいんじゃないでしょうか。堅苦しく考えず、どんどんキモノを着て、楽しんでほしいですね。
— 結婚のとき母から持たされたキモノ、母のたんすに眠っているキモノ、私も着てみたくなってきました。楽しいお話をどうもありがとうございました!
First Posted : 2014.10.6 on "clover&"