フィッシングガイド 武田架奈美さん(後編)

はじめはマス釣り、釣り堀からでも。 「釣れた!」という喜びを、ぜひ味わって! TEXT by 鈴木麻由美 PHOTO by 菊池陽一郎

バスフィッシングガイドとして、ゲストの希望を最大限尊重しながら釣れる場所、釣れる方法をチョイスしている武田さん(前編)。武田さん自身は、釣り方にどんなこだわりがあるのでしょう。

小学生のころから、見よう見真似で

—  武田さんが釣りを始めたのは?

武田♣ 小学生のときです。出身は京都なんですけど、家の近くに桂川があり、網で魚を獲ったりして遊んでいました。それから見よう見真似で、釣り具屋さんで100円くらいの竹竿を買いまして。うち、食堂をやっていたので、うどんを一玉もらって、ちぎってエサにして釣る、ということをやっていました。全然、釣れませんでしたけどね(笑)。
あるとき、そばで釣りをしていたおじさんが「お嬢ちゃん、これでやってみな」と、枯れた枝をくれたんです。パキパキッと割ると、中から虫が出てきて。それを針の先にピッとつけて釣ってみたら、なんと一発で釣れたんですよ。それで、開眼しまして。なんだ、おっちゃんがうまいんじゃないんだ、エサなんだ、と(笑)。
釣り用語に「マッチ・ザ・ベイト」という言葉があるんです。魚がそのとき捕食しているエサにルアーを合わせることを言います。たとえば、バスが稚アユを捕食している時期だったら、稚アユくらいのサイズのものに敏感に反応するので、そういったルアーを使う。ワカサギを捕食している時期だったら、ワカサギのサイズで、キラキラしているルアーを使う。おっちゃんのおかげで、子どもながらに「マッチ・ザ・ベイト」の大切さを思い知りました。

—  それからずっと釣りを続けているのですか。

武田♣ いいえ。中学に入ってからは部活に一生懸命になってしまい、川には行かなくなってしまうんです。次に釣りを始めたのは、家の都合で神奈川県に引っ越し、19歳で車の免許を取ってから。キャンプが好きで、山中湖にキャンプに行くようになったんですけど、時間がたっぷりあるでしょ。釣りでもしてみようか、バスフィッシングっていうのがあるみたいだよ、と。陸(おか)から釣ったり、手漕ぎのボートで釣ったりしているうちに面白くなってきて、釣りだけで山中湖に通うようになりました。
でも、全然釣れなくて。いま思うと、とんでもなく間違ったやり方していたような(笑)。初バスを釣るのに、1年もかかりました。釣れたときは嬉しかったですね。そこからバスフィッシングにはまり、いまに至るというわけです。

小学生のころから、見よう見真似で釣りを始めた。「当時は釣り専門誌やテレビ番組もなかったですから、情報がなくて苦労しました。初めて魚が釣れたときは嬉しかったですね!」
小学生のころから、見よう見真似で釣りを始めた。「当時は釣り専門誌やテレビ番組もなかったですから、情報がなくて苦労しました。初めて魚が釣れたときは嬉しかったですね!」

ボートに乗って、そのスピード感に感動!

 霞ヶ浦というエリアで、バスフィッシングを楽しむようになったのは?

武田♣ 話せば長くなるので割愛しますが、レーシングドライバーをしていた当時、知人のドライバーのひとりが、ここ霞ヶ浦のマリーナにボートを持ってバスフィッシングをやっていたんです。バスフィッシング始めたんだ、面白いよね、という会話の中で、じゃあ一度ボートで釣りをしてみなよ、ということで、乗せてもらえる機会があったんです。
もうすごいスピードで、楽しくて! レーシングドライバーという仕事柄、速いものが好き。でっかいエンジンがついていて、ハンドルがあって、足でアクセル操作ができるものが大好き! 一日中でも乗っていたいという感じで、しかもその知人のガイドが良くて、その日に大きなバスが釣れたんですね。それで、ボートってすごいな! 霞ヶ浦ってさすがエリアが大きいな! と感動して即、私もボートを買うことに。
最初に買ったボートは、中古の17フィート。今日、乗ったボートが20フィートですから、だいぶ小さめですね。このマリーナに置かせてもらい、ここからボートを出して釣りをするようになりました。

 大会などにも出場されていますね。

武田♣ はい。プロトーナメントのオープン戦や、マリーナの大会などに参戦していました。

 どのような経緯で、バスフィッシングガイドの仕事を始めたのですか。

武田♣ 話は前後してしまうのですが、20歳前後からずっとレーシングドライバー、撮影ドライバーなど、ドライバーとしての仕事を続けてきました。ずうっとフリーで。でも、それって、どうしても不安定。もうひとつ仕事を持ちたいな、と思ったんですね。
そこで、もうひとつの仕事としてバスフィッシングガイドがいいのでは、と。ガイドをやっている先輩などに相談しながら、2年くらい考えたかな。5年ほど前に思い切って始めました。いまは、ドライバーとしての仕事とバスフィッシングガイドの仕事を並行してやっています。

 女性唯一のバスフィッシングガイドなのですよね。

武田♣ はじめは不安でいっぱいでした。技量についてもそうですし、すべてが未経験。ゼロからのスタートでしたから。でも、なんでもとりあえずやってみよう! というタイプなので。
フィッシングスタイル、トーク、空気感などを含めて私のことを気に入ってくれる人が一人ずつでも増えていけばいいな、と思っていましたね。ゲストの方々にご乗船いただきながら、ゆっくりとしたペースですが、いまも楽しく仕事をさせていただいています。

霞ヶ浦水系の常陸(ひたち)利根川で。「初めて霞ヶ浦で釣りをしたときは、そのエリアの広さ、ダイナミックさに感動しました」
霞ヶ浦水系の常陸(ひたち)利根川で。「初めて霞ヶ浦で釣りをしたときは、そのエリアの広さ、ダイナミックさに感動しました」

展開が早い、どんどん探していく釣り方が好き

 フィッシングスタイルとおっしゃいましたが、武田さんの釣りは?

武田♣ 釣りってゴルフやクルマの運転と同じで、性格が出るんです。いつまでも同じところでじーっと釣ってる人もいますが、私はそれが苦手で。展開が早い釣り方が好き。せっかく移動力の高いボートに乗っているんですから、どんどん移動していって、どんどんルアーを投げて。私は、それがバスフィッシングらしいと思っています。

 最後に、武田さんの思う「釣り」の魅力を教えてください。

武田♣ 私は「釣り」は、魚との出会いだけじゃなくて、人とも出会えるものだと思っています。実際、私自身、釣りを始めたことによって、人と出会える範囲がそれまでの倍以上に広がったんです。
女性の方で釣りに興味を持ってくださる方はまだまだ少ないですが、少しでも「やってみたい」と思ったら、ぜひチャレンジしてみてください。最初は手軽なマス釣りや、それこそ釣り堀などから始めるのもいいですよ。もちろん、ガイドを利用してもらっても。魚が釣れたときの喜びを一度味わったら、そこからもうやみつきになりますから!

展開が早い、どんどん探していく釣り方が武田さんお得意のバスフィッシングスタイル。手にしているのは武田さんがプロデュースしたオリジナルカラーのソフトルアー。
展開が早い、どんどん探していく釣り方が武田さんお得意のバスフィッシングスタイル。手にしているのは武田さんがプロデュースしたオリジナルカラーのソフトルアー。

取材協力=ブイロクマリンサービス

First Posted : 2015.10.26 on "clover&"

PROFILE

武田 架奈美 [ たけだかなみ ]

小学生時代から釣りを始め、20代でバスフィッシングにのめり込む。一方で、20代初めからレーシングドライバー、撮影ドライバーとして活躍。5年前より、バスフィッシングを仕事に。現在は、撮影ドライバー、バスフィッシングガイドと二足のわらじで精力的に活動中。

http://ameblo.jp/kanami-t/


writer’s profile

鈴木麻由美 女性のライフスタイル全般および育児・保育・教育関係を中心に取材・執筆。

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