*得意な料理の腕を生かし、HOTNETキッチンの活動を盛り上げている高橋さん(前編)。さまざまなイベントを通して「みんなで作ってみんなで食べる」楽しさを伝えています。
定番メニューは、持ち寄り野菜の「重ね煮」
— HOTNETキッチンでは、どのような料理を作るのですか。
高橋♣ 毎回、必ず作るのが、HOTNETキッチン流「重ね煮」。参加者に自由に野菜を持ち寄っていただき、それをスライスして鍋に重ねて入れて、塩だけちょっと振って弱火でじっくり煮る、という料理です。原則、野菜の皮はむきません。皮の部分にこそ栄養があるので。「好きな野菜を持ってきてくださいね」とお伝えするのですが、不思議と同じものばかりということにはなりませんね。
この一品のほか、たとえば築地川の公園でやるときは築地市場が近いので、そこで新鮮な魚介を仕入れてきて、鯛の塩釜とか、アクアパッツァとか、トムヤムクンスープなども作ります。
また最近は、災害時をテーマにしたメニュー開発も手がけているので、缶詰や乾物を使うことも。たとえば生春巻きなら、火がなくても作れるので、災害時で火が使えないときにも便利なメニュー。具材を用意して巻くだけだから、料理が苦手な人でも、みんなで作ってみんなで食べるということが気軽にできますし。
料理を通してコミュニケーションが生まれる
— 「みんなで作ってみんなで食べる」ことの魅力は?
高橋♣ コミュニケーションが生まれることですね。初めて出会った人同士でも、同じ作業をいっしょにすることで会話が始まる。「これ、洗っておきましょうか」とか「あれ、取ってください」とか。それで、4~5人のチームに分かれて作業をするんですけど、それはできるだけいつもと違うメンバーになるようにしているんです。たとえ家族で参加しても、ほかの人も加えるなどしていろいろな人と出会えるように工夫します。
— 参加された方々の感想は?
高橋♣ みなさん、思った以上に本格的な料理ができることに驚き、喜んでくださいますね。アウトドアというとバーベキューしか思いつかなかったんだけど、こんな料理もできるんだ、と。ふだん会わない人たちとのコミュニケーションも楽しかった、という声も多いです。
たとえ、失敗してもそれも楽しかった、と。
— どのような失敗談が?
高橋♣ チーズフォンデュがうまく具材に絡まず、固まってしまったとか(笑)。
アウトドア料理の経験は、災害時にもお役立ち
— HOTNETキッチンの今後の活動について教えてください。
石田♣ 最近のHOTNETキッチンのテーマは防災。災害が起こり、家のキッチンが使えない状態になったらどうするか。実際、ガスもない電気もないところで火を焚く必要性が出てきたときに、公園などにかまどなどの設備があったら助かるのではないか。
築地川の公園では、ふだんは花壇なんだけど花をどけるとかまどになる設備があって、水場もある。でも現状では、このような設備を備えた公園は非常に少ないんですね。だから、私たちでいろいろと調査をし、自治体に働きかけようと。
そして、そうした設備を使って、ふだんから「みんなで作ってみんなで食べる」ことをしていると、いざというときも慌てずにすむ。
実際私は、東日本大震災後、炊き出しに行ったんですが、何百人単位の食事なんて作ったこともなかったけれど、何十人レベルならイベントで経験していたから、「あのときの10倍か」ということで対処できたということもあります。
高橋♣ 公園などの設備もそうですし、いざというとき地元のつながりって大事だと思うんですね。「みんなで作ってみんなで食べる」ことは、そのつながりづくりにも役立つと思うんです。みなさん本業があるので、手広くやることはなかなか難しいけれど、HOTNETキッチンの活動は細く長く楽しく続けていきたいですね。
First Posted : 2015.8.31 on "clover&"