サイクルライフナビゲーター 絹代さん(後編)

美容と健康効果がたくさん 女性に嬉しい自転車ライフのすすめ TEXT by 上原千都世 PHOTO by 菊池陽一郎

各種メディアやイベントで、自転車の魅力を伝え続けている「サイクルライフナビゲーター」の絹代さん(前編)。体が弱くて自分に全く自信がなかったという絹代さんにとって、自転車は体への効果以上にメンタルへの効果をもたらしてくれるものでした。

育児や家事のストレスも自転車で軽くなる

—  自転車は女性にとっては嬉しい効果ばかりですね。それだけ体が変わると気持ちも前向きになれそうです。

絹代♣ まさに、そこが自転車のいいところで、体以上にメンタルにとても大きな効果があります。一定の速度で長い時間ペダルを漕ぐリズム運動は、抗不安剤と同じ効果があるとも言われています。
景色や季節の変化を楽しみながら走る気持ちよさはもちろん、長い距離を走れたというという成功体験も大きいですね。運動初心者がフルマラソン47キロを走るのは大変ですが、自転車なら40キロどころか100キロも軽く走れてしまう。「運動が苦手な私でも、やればできるんだ!」という達成感は、とても大きな自信になります。

—  主婦の育児や家事のストレス解消にも効果がありそうですね。

絹代♣ 私も結婚していて1歳の娘がいるのですが、主婦って本当に大変じゃないですか。洗濯もして食事も毎日作って、せっかく片づけても子どもが散らかして振り出しに戻る、みたいな、マイナスをゼロに戻す繰り返し。仕事は膨大なのに、社会的に認められない悶々とした気持ちを抱えていたり、育児でも不安をいっぱい抱えて自信をなくしてしまったり。でもちょっと外に出て、景色を楽しみながら自転車をこいでいると、大きな不安がスーッと小さくなるのを感じます。体型が変わって、姿勢もよくなった自分を鏡で見ると、気持ちがウキウキしてくるんです。自転車に乗るようになって自己肯定感があがり、心から笑えるようになりました! という女性も多いんですよ。

運動しながらの食べ歩きは罪悪感なし

 女性の自転車愛好者は増えているのですか。

絹代♣ とても増えましたね。最近、女性に人気があるのが「カフェライド」。素敵なレストランやカフェに寄りながら走るんです。車や電車での食べ歩きは「太ってしまうかも」と罪悪感を抱きがちですが(笑)、自転車で運動しながら移動するカフェライドなら食べても太らない、気持ちいいいし、何より運動した後の食事が美味しい! 自転車での移動中はすべての景色が見えて、その土地の暮らしがわかり、五感で匂いや風景を感じられる。季節の変化や新しいお店、町の変化に気がつく。女性はそんな「ちょっとした楽しみ」を見つけるのが嬉しいんですよね。

1歳のお子さんの育児真っ最中の絹代さん。育児や家事でどんなに忙しくても時間を作って自転車に乗りに行く。そうすることで子どもや家族に対して些細なことでイライラすることが減り、自分を気持ちよく保つことができる。
1歳のお子さんの育児真っ最中の絹代さん。育児や家事でどんなに忙しくても時間を作って自転車に乗りに行く。そうすることで子どもや家族に対して些細なことでイライラすることが減り、自分を気持ちよく保つことができる。

「命を乗せている」「車」であることを忘れずに

 自転車に乗るときに気を付けることはありますか。

絹代♣ とにかくルールを守る、これにつきますね。主にママチャリに乗っているお母さんで、ギョッとするくらい危険な乗り方をしている方が多いです。しかもご自分が危険な乗り方をしていることに気がついていない。自転車は「車」です。スピードを出して人や車にぶつかったら自分の命も、子どもの命も、相手の命も奪いかねない。「命を乗せている」ということをもっと真剣に考えてほしいな、と思います。

 具体的にはどんな行為が危ないのですか。

絹代♣ 子ども乗せの座席は6歳までと法律で決まっています。でもどう見ても6歳以上の大きなお子さんを乗せている方をよく見かけます。重量オーバーになるので、自転車が倒れたときに支えきれません。もし前後にお子さんを乗せていたら自転車の重量と併せて100キロ近くになることもあるんですから。
スマホを見ながら、傘を差しながら、ヒールやサンダルで乗るのも、不安定でペダルを踏み外すこともあり本当に危ない。ヒヤヒヤして思わずお声をかけてしまったことが何度もあります(苦笑)。

大人が見本になって子どもに伝える

 自転車の人身事故も増えているそうですね。

絹代♣ 自転車は想像以上に破壊力があることを自覚してほしいのです。気軽に乗れるのはメリットですが「命を奪う」可能性が十分あります。誰も見ていないからと大人がルールを破ってしまうと、子どももそれでいいと勘違いしてしまいます。まずは大人がルールを率先して守って、お子さんたちの見本になってほしいんですよね。

「スポーツタイプの自転車は“ながら乗り”は絶対できません。だからこそ健康への効果も高いんです」
「スポーツタイプの自転車は“ながら乗り”は絶対できません。だからこそ健康への効果も高いんです」

親子の絆が深まる自転車ライフ。五感で感じる環境教育

 親子でルールを話し合ってもいいですね。でもルールさえ守れば、自転車は親子でも気軽に楽しめますよね

絹代♣ 親子で自転車、おススメです! 親子でイベントに参加する方も増えました。同じ景色を見て、同じ苦労を味わって、同じ体験をしながら一緒に自転車を走らせることで、自然と親子の絆も深まります。風が吹いたら涼しい、陽が陰ったら寒いけど、太陽が顔を出したらあたたかい、木陰に入ったら夏でも涼しい、川のせせらぎ、鳥の声など自然の中にあふれている音を聞く。こういった体験は、お子さんの情緒を豊かにしてくれます。大人も心が豊かになりますし、環境問題をお子さんと一緒に考えるとてもいい機会になると感じています。

 体づくり、メンタルアップ、親子のコミュニケーション、情操や環境教育、自転車は本当に多彩な魅力があるのですね。

絹代♣ おひとりでも、親子でも、ぜひ自転車に乗ってみてください。私はJICAに勤めた経験もあるし、環境問題にもすごく関心がありました。「環境問題」そして「丈夫になりたい」「脚が太くてイヤ」という、自分がずっと抱えていた課題が、すべて自転車でつながって、体も心も人生もよい方向に変化しました。
景色や季節を楽しんで、いろいろなものを見て、たくさん感動をして、情緒も磨いて、ひとりでも多くの女性にキレイになってもらいたいと思っています。女性向けの楽しいライドイベントもこれからどんどん企画していきます。自転車ライフをぜひ楽しんでくださいね。

 これからの季節、サイクリングにもぴったりのお出かけ日和も増えてきます。絹代さんのお話を聞いて、親子でサイクリングに行きたくなりました!

「スポーツ用自転車初心者は、装備もすべて用意されて、プロが乗り方を指導するレンタサイクルつきのイベントに参加してみるのもおすすめです」。最近では60代、70代で元気に自転車に乗っている女性も増えているとのこと。
「スポーツ用自転車初心者は、装備もすべて用意されて、プロが乗り方を指導するレンタサイクルつきのイベントに参加してみるのもおすすめです」。最近では60代、70代で元気に自転車に乗っている女性も増えているとのこと。

First Posted : 2015.4.27 on "clover&"

PROFILE

絹代 [ きぬよ]

健康管理士、自転車活用推進研究会理事。東京大学農学部卒業後、JICA(国際協力機構)勤務を経て、英国の大学院で身体運動と栄養について学ぶ。自転車ロードレースの実業団、日本代表の広報スタッフを経験し、現在は雑誌、TV、ラジオなどのメディア、各種イベントでMCや自転車フィットネスの提案を行うなど、自転車を軸に、健康、美容、エコロジーのフィールドで活躍中。自転車を使った町おこしや女性のためのイベント、子ども自転車教室のスタッフも務める。著書に『チャリーナのための自転車BOOK』(幻冬舎エデュケーション)『自転車と旅しよう!』(えい文庫)など。

http://www.kinuyoworld.net/

〈近況〉ブログ:それなりに、日々更新


writer’s profile

上原千都世 エンタメ情報誌の編集を経てフリーに。「エンタメ・暮らし・子ども」などをキーワードに雑誌・書籍・webサイトで執筆中。

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