サイクルライフナビゲーター 絹代さん(前編)

美容と健康効果がたくさん 女性に嬉しい自転車ライフのすすめ TEXT by 上原千都世 PHOTO by 菊池陽一郎

各地の自転車イベントのMCや企画スタッフを務め、雑誌やテレビ、ラジオなどのメディアで「サイクルライフナビゲーター」として自転車の楽しさや健康・美容面の効果を伝えている絹代さん。アクティブな印象ですが、実は小さい頃から体が弱くて自分に自信が持てなかったのだそう。そんな絹代さんの体も心も元気にしてくれた自転車との出会いと、その魅力についてうかがいました。

「体が弱い」「脚が太い」長年の悩みが自転車で解消

—  どういった経緯で、自転車の仕事をするようになったのですか? もともと自転車や運動が好きだったのでしょうか。

絹代♣ 実は私は運動が得意どころか、小さい頃から体がとても弱かったんです。学校も休みがちだったし、体を壊して歩くことすら大変だった時期もあります。私はこの先、結婚も仕事もできないかもしれない、と不安だらけでした。
そんな自分の体の仕組みを知りたくて、「健康管理士」の資格を取ったんです。学びを深めるうちに同じ栄養でも人によってこんなに効果が違うんだ、ということが面白くなりスポーツ栄養学に興味を持つようになりました。食事次第で私のように体の弱い人も元気になれることもあるし、トップアスリートはパフォーマンスを上げることができる。当時は日本にスポーツ栄養学を学べる場所が少なくて、働いてお金を貯めてイギリスの大学院に行って勉強をしたんです。

—  自分の体と向き合ったことがスタートだったのですね。自転車との出会いは?

絹代♣ 大学院に行き始めた時期に、たまたまテレビ番組のオーディションに受かったんです。「自転車で有酸素運動をしよう」という番組でした。そのご縁で、ロードレースチームの広報の仕事をすることになりました。この時点ではまだ「自転車に乗る」ことが仕事ではなく、企画や営業、WEB制作などを担当していました。裏方スタッフとして、自転車選手のサポート的な仕事をするうち、トップレーサーの方の脚がとても細いことに気がついてびっくりしたんです。自転車選手は脚が太い、というイメージがあったので。それは、今思えば競輪選手のイメージなんですけどね。

 そこから自転車の魅力にハマッたのですか?

絹代♣ そうですね。私は上半身が痩せているのに下半身と脚が太いことがずっとコンプレックスでした。「自転車は脚が太くなる」と思い込んでいたので、学生時代から自転車をあえて避けていたくらいなんですが、雑誌やメディアの仕事で自分でロードバイクに乗り始めたら、脚が1週間で1.5㎝も細くなったんです。同時に体の調子もよくなり、気持ちも前向きになっていきました。
以前から学んでいたスポーツ栄養学も、自転車をテーマにシフトして、「なぜ脚が細くなるのか」筋肉や体の作り、メカニズムを理解して、その理論や自分の体験をイベントや雑誌、本などで伝える活動をするようになりました。

「自転車は究極のオープンカー」という絹代さん。「今まで車や電車、バスで移動していた場所を自転車で走るだけで、何倍もの感動が味わえます!」
「自転車は究極のオープンカー」という絹代さん。「今まで車や電車、バスで移動していた場所を自転車で走るだけで、何倍もの感動が味わえます!」

無理のない全身運動で痩せやすくなる

 自転車による体型の変化を、ご自身で実感されたんですね。健康と美容への効果をもっと詳しく教えてください。

絹代♣ 女性は子どもを産むために、腰回りに皮下脂肪がたくさんつくようにプログラミングされています。だから痩せにくい。私のように下半身が太いことを気にしている女性も多いと思うのですが、体脂肪は一部分だけ落とすのは難しくて、全身運動じゃないと脂肪が分解されないんです。
スポーツ用自転車は乗っているだけで全身運動になります。ペダルを踏み込むときに脚から腰の筋肉をまんべんなく使いますし、前傾姿勢を保つために腹筋や背筋を働かせるからです。長く乗れば有酸素運動になって、脂肪も分解されやすくなり、体が全体的に痩せやすくなるんです。

血の巡りが良くなり冷え性も改善。アンチエイジング効果も

 ダイエット効果が高いんですね。他にはどんな効果がありますか。

絹代♣ 全身の血流がよくなりますから、冷え性も改善されます。心臓から一番遠い、足先までを動かすことで下半身に筋肉がつき、ポンプ機能が強化され全身に血が巡りやすくなるんです。つま先など末端が冷えている方も多いですよね。冷え性を放っておくと慢性疾患の原因になりがちです。足先を動かすことで血流がよくなり老廃物が流されるから、むくみが取れて脚も細くなります。女性が抱えがちな悩みを解消できるのは、自転車の大きなメリットですね。ただ、残念ながらママチャリでは、なかなかこの運動効果が得られないんです。

絹代さんがこの日乗ってきたのは英国ブロンプトン製のミニベロ。「ミニベロ」とはタイヤの小さい小径車のことで、写真のように畳めるタイプも。カフェで自分の椅子のそばにも置けるし、カバーをつければ電車にも乗れる。「長い距離でも疲れませんし、サドルなどパーツをオシャレにカスタマイズしたり、とファッション性も高いので女性に人気です」
絹代さんがこの日乗ってきたのは英国ブロンプトン製のミニベロ。「ミニベロ」とはタイヤの小さい小径車のことで、写真のように畳めるタイプも。カフェで自分の椅子のそばにも置けるし、カバーをつければ電車にも乗れる。「長い距離でも疲れませんし、サドルなどパーツをオシャレにカスタマイズしたり、とファッション性も高いので女性に人気です」

無理なく長時間運動できてアンチエイジング効果も

 でもママチャリが中心の女性にとって、スポーツタイプの自転車はハードルが高いイメージがあります。

絹代♣ 「ハードルが高い」というお声はよく聞きます。でもママチャリからスポーツ用自転車に乗り換えて、その乗りやすさと爽快感にハマる女性は多いんですよ。長い距離を走ることを想定して作られた自転車は本当にラクなんです。
しかも自転車に運動神経は不要! 実は球技などほかの運動が苦手、という自転車選手も多いんですよ。私も先ほどお話したように、もともと体が弱かったし体育も苦手でした(笑)。自転車はサドルとペダル、ハンドルの3点で体重を分散してくれるので、体へのダメージが少ないんです。だからスポーツバイク初心者でも20キロ、40キロの距離も難なく乗れてしまいます。

 普段、運動していない女性でもいきなり長距離を走れるのですか?

絹代♣ そうなんです。新婚旅行でハワイに行った女性が、レンタサイクルで初めて乗ったロードバイクで160キロを完走した、というような例がたくさんあります。運動が苦手な人が「無理なく長い時間運動をする」ことが自転車なら可能なんです。この「長時間運動をする」ということが大切で、長い時間運動をすると、心肺機能があがり、脂肪が燃えて体のさまざまな機能が活性化します。
運動をすると成長ホルモンも出て代謝がよくなります。姿勢もよくなって、一番年齢を感じさせる「後ろ姿」が老けた印象になってしまうのも避けられます。加齢による筋肉の衰えを止めるには、スポーツ用自転車のように一定のスピードで体に刺激を与えることが必要。後ろ姿が変わる=アンチエイジング効果が高い、ということに気がついて自転車がやめられなくなったとおっしゃる女性も多いですよ。

いかに動けるうちに運動を始めるかがカギ。未来の自分へ投資

 運動神経がなくても大丈夫、といわれると安心しますね。「スポーツ用の自転車にチャレンジしてみようかな」という気になります。

絹代♣ 30代や40代では「まだまだ動ける」と安心しがちですが、歳をとるごとに体は動かなくなります。そうなってから運動を始めるのはとてもエネルギーがいるんですよね。いかに元気な年齢から運動を始めるか、それが若さを保つ秘訣です。自転車は思った以上にラクに運動ができ、しかも思った以上に楽しい。女性に向いているエクササイズだと思います。

「ママチャリしか乗ったことのない方は、スポーツ用自転車の乗り心地のよさにビックリするはず。お手頃価格で高性能のものも売っていますし、買い物かごをワンタッチで取りつけられるものもあるので、ぜひスポーツ用自転車に挑戦してみてください!」
「ママチャリしか乗ったことのない方は、スポーツ用自転車の乗り心地のよさにビックリするはず。お手頃価格で高性能のものも売っていますし、買い物かごをワンタッチで取りつけられるものもあるので、ぜひスポーツ用自転車に挑戦してみてください!」

*自転車は体の変化以上に、メンタルの面で大きな効果があるそうです。後編では、「自己肯定感をあげてくれる」心理的効果に加え、「命を守るため」に知らなければならない自転車のルール、自転車で楽しむ親子のコミュニケーションなどをうかがいます。お楽しみに!

First Posted : 2015.4.20 on "clover&"

PROFILE

絹代 [ きぬよ]

健康管理士、自転車活用推進研究会理事。東京大学農学部卒業後、JICA(国際協力機構)勤務を経て、英国の大学院で身体運動と栄養について学ぶ。自転車ロードレースの実業団、日本代表の広報スタッフを経験し、現在は雑誌、TV、ラジオなどのメディア、各種イベントでMCや自転車フィットネスの提案を行うなど、自転車を軸に、健康、美容、エコロジーのフィールドで活躍中。自転車を使った町おこしや女性のためのイベント、子ども自転車教室のスタッフも務める。著書に『チャリーナのための自転車BOOK』(幻冬舎エデュケーション)『自転車と旅しよう!』(えい文庫)など。

http://www.kinuyoworld.net/

〈近況〉ブログ:それなりに、日々更新


writer’s profile

上原千都世 エンタメ情報誌の編集を経てフリーに。「エンタメ・暮らし・子ども」などをキーワードに雑誌・書籍・webサイトで執筆中。

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