紅茶研究家 スチュワード麻子さん(前編)

健康や美しさを無理なく手に入れるために 暮らしに紅茶を取り入れましょう TEXT by 萩原まみ PHOTO by 菊池陽一郎

イギリス在住17年。本場の紅茶文化を学び、ロンドンで紅茶スクール「Infuse(インフューズ)」を主宰するスチュワード麻子さん。日本とイギリスを行き来しながら、レッスン、講演、著作などを通じて、紅茶の魅力を伝えています。健康や美容にもいいという紅茶を上手に生活に取り入れ、日々を豊かに過ごす方法を教わりました。

世界中で愛されるお茶の魅力

— 紅茶との出会いから教えてください。

スチュワード♣ 大学生のとき、父の転勤で両親と妹が10年ほどオーストラリアで生活をすることになったんです。私は日本に残ったのですが、行き来はありました。最初に5年滞在したメルボルンがイギリス的な土地だったものですから、元はコーヒー党だった家族が紅茶党になって、母も朝から紅茶をいれるようになったんです。紅茶に馴染んだのはそれがきっかけですね。

— より本格的にハマった理由はなんだったんでしょう?

スチュワード♣ 大学卒業後に日本航空に入社しまして、国際線の客室乗務員をしている間に、どこの国に行ってもお茶が文化のなかに根づいていることに興味を持ちました。場所によって作法は違いますし、緑茶であったり、烏龍茶であったりするんですが、しっかりと生活に結びついている。中国茶といっても中国と台湾では違うし、チャイといってもスリランカとインドとトルコ、クウェートでは違う。儀式性みたいな部分にも惹かれて、お茶のことをもっと勉強したくなりました。

— 最初はどんなふうに勉強をなさったんですか?

スチュワード♣ 私が最初に資格を取った日本紅茶協会というところは、当時、大変な人気で、講座の倍率がとても高かったんです。定期的に通えない人は入れないということで、客室乗務員の仕事をしながらではとても無理でしたから、いったんは諦めました。その後、イギリス人の夫と結婚、長男を出産して、「何かお稽古事を始めたら?」と人から言われて、紅茶を選びました。1年間通って取得したのが、ジュニアティーインストラクターという資格です。

2014年11月末に銀座三越 ハロッズ・ザ・プランテーション ルームスで行われたセミナー「毎日を幸せに暮らす~イギリス的に紅茶と、そしてインテリアから美しく健康に~」にお邪魔してお話を伺いました。
2014年11月末に銀座三越 ハロッズ・ザ・プランテーション ルームスで行われたセミナー「毎日を幸せに暮らす~イギリス的に紅茶と、そしてインテリアから美しく健康に~」にお邪魔してお話を伺いました。

イギリスで紅茶を究める

— すぐに紅茶の仕事を始められたのでしょうか?

スチュワード♣ 資格を取っている途中で次男を妊娠しまして、出産4カ月後、夫の仕事の都合でイギリスで暮らすことになったんです。日本では一切、紅茶の仕事をしたことがないまま、イギリスに渡りました。
もともと、起業しようとか、教室をしようというようなプランすらなく、ただ紅茶が好きだったから勉強しただけ。イギリスでも勉強を続けたかったんですが、向こうには紅茶に関する学校がないんですよ。英国紅茶協会に相談に行って、「メーカーに入るしかない」と言われたんですが、子どももいますからフルで働くのは無理。メーカーにお願いして、研修生という扱いで数年間、週に2~3回、勉強がてら行かせてもらって、テイスティングの基礎などを全部教えてもらいました。

— 紅茶を教えることになったいきさつは?

スチュワード♣ 日本人の方とお話する機会が全然なかったので、3人目を妊娠したとき、どうせ仕事も休まないといけないし、紅茶教室をやったら日本の人が来てくれるかな?という感じで、日系紙に3行広告を出しました。自宅でせいぜい6人ぐらいのつもりだったのですが、他に教室がなかったせいでしょうか、ものすごい反響で。11月スタートで、娘を出産したのは1月20日、産んだあとも4月には再開しました。下の階で子どもを見ていてもらって、私は上で教室やって、終わるやいなや授乳、みたいな(笑)。
ウェイティングが百何十人という状況が何年も続いて、自宅ではなく、外に教室を構えることにしたんです。多いときで午前20人、午後20人で週4回とか、すごい勢いで教えていましたね。
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どんどん広がる紅茶のお仕事

— オリジナルブレンドティーの販売もなさっているんですね。

スチュワード♣ 自分がテイスターをしていたメーカーの紅茶を使ってレッスンをしていたら、「おいしいから買いたい」と言っていただくようになって、生徒さんに分けるためだけに小さなブランドを作ったんです。そうこうするうち、2006年に「日本のデパートの英国フェアで売りませんか?」ってお話がきました。それからはほぼ毎年、英国フェアに呼んでもらって、トークをして、Infuseブランドの紅茶を売るということをしています。

— 本も4冊、書かれています。現在はどんなペースでお仕事を?

スチュワード♣ 書くのはとても好きなのですが、子ども3人もまだ小さかったですし、教室で教えながらすべてを両立するのはちょっと無理だと思ったので、教室をやや縮小することにしました。家を買い換えたときに、12人ぐらい入れるスペースのある家にして、それからはずっと自宅でレッスンをしています。今は週に4クラス。アシスタントの方に片づけなどを手伝ってもらうことはありますが、基本的に自分で何もかもやっています。

— 子育てとの両立は大変だったのでは?

スチュワード♣ 子どもが小さいうちは大変でした。けれど、多くのお稽古ごとの先生は同じだと思うんですが、子どもが学校に行っている間に自宅で教室をやって、子どもが帰って来るときには家族のために100%家にいられます。通勤の時間がないですし、9時-5時でもないので、あまり無理はなかったですね。

— イギリス在住ですが、日本でもレッスンを行うようになったのは?

スチュワード♣ わざわざ日本から留学してくださる方も出てきて、そのうち日本のリプトンティースクールからのお声掛けで、不定期で講師として教えるようになったんです。生徒さんから「もっと少人数で習いたい」という声があって、2年前からInfuseの講座として日本でも開講することにしました。

セミナーのお土産として配られた日本未発売のメーカーAMANZI TEAの「Immuni-Tea」と、スチュワードさんが手がけるInfuseの「White Jewel」。どちらも美容と健康に効果のあるブレンド。
セミナーのお土産として配られた日本未発売のメーカーAMANZI TEAの「Immuni-Tea」と、スチュワードさんが手がけるInfuseの「White Jewel」。どちらも美容と健康に効果のあるブレンド。

*お茶文化をこよなく愛し、イギリスで紅茶研究を続けるスチュワードさん。後編では、紅茶の効能や美味しい飲み方、選び方を具体的に教わります。

取材協力=銀座三越 ハロッズ・ザ・プランテーション ルームス

First Posted : 2015.1.5 on "clover&"

PROFILE

スチュワード麻子  [スチュワード あさこ]

紅茶研究家。
ロンドンの紅茶スクール「Infuse(インフューズ)」主宰。イギリス、日本でレッスン、講演活動を行っている。みずからブレンドを手がけるオリジナルの紅茶、雑貨の販売も。著書に『ロンドン、とっておきのティープレイスへ』『英国・カントリー とっておきのティープレイスへ』『英国スタイルで楽しむ紅茶』『英国、とっておきのティープレイスへ』(いずれも河出書房新社)がある。日本紅茶協会シニアティーインストラクター、日本茶アドバイザー、英国パティスリー&コンフェクショナリーシェフの資格を持つ。
http://www.infuse-tea.co.uk

〈近況〉ブログ:スチュワード麻子オフィシャルブログ


writer’s profile

萩原まみ 食、ジェンダー、セクシュアリティ、ムーミン、イケメン俳優が得意ジャンル。『ムーミンマグ物語』(講談社)の文章担当。

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