おもちゃコンサルタントマスター 菊地三奈さん(後編)

良いおもちゃで子どもとグッドコミュニケーション 大人も楽しいのが一番! TEXT by 上原千都世 PHOTO by 三浦健司

*「おもちゃコンサルタントマスター」「木育マイスター」として、幅広い活動をされている菊地さん(前編)。「おもちゃの専門家」、そして中1と小4の息子さんのお母さんとして、電子ゲーム機との付き合い方をうかがってみました。

禁止するのではなく、うまく通過してくれたら

— 息子さんたちはDSも持っているんですね。お仕事柄、与えてないのかと思っていました。ゲーム機とは、どのように付き合っていけばいいとお考えですか。

菊地♣ 小学生になると「うちの子にはゲーム機を与えない!」「絶対禁止!」というのは現実的に難しいですよね。禁止して取り上げたところで解決にはなりませんし、自分のお金で買えるようになったときに一日中ゲームをやっていたり、執着してしまう子もいます。私は、ある程度自分で考えて、うまく通過してほしいと思っているんです。
長男が小5、次男が小2のクリスマスに、我が家にDSがやってきました。サンタさんからのプレゼントとして(笑)。それからテレビも含めて1日2時間まで、と決めて、その中で自分たちで管理するように言っています。自分で考えて、夢中になって飽きて卒業してくれたらいいな、という考えです。

— うまく付き合えばいいと。ちょっとホッとしました。

菊地♣ 子どもたちは他の遊びを知らないだけなんです。我が家に息子の友だちが遊びに来て、外国のすごろくなんかを出して教えてあげると、ものすごく盛り上がるんですよ。面白い海外もの、国内の作家さんによる手作りの作品など、いいおもちゃはいっぱいあります。DSソフト1本の値段で、家族みんなで遊べるテーブルゲームもたくさんあります。
いま自分の子どもがどんなものに興味をもっているのか、どんなものがあったら楽しく過ごせるか、そんな視点でゲーム機以外のおもちゃを探してもらえると嬉しいですね。

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「ゲーム機をただ禁止するだけではなく、みんなで遊ぶと楽しい遊びやおもちゃを大人が知って教えてあげる、大人も楽しんで一緒に遊ぶ時間を作ってあげられるといいのかなと思います」

おもちゃで子どもの得意分野もよくわかる

— これからクリスマスプレゼントのシーズンです。小学生も大人も楽しめるおススメのおもちゃやテーブルゲームを教えてください。

菊地♣ 2014年の「グッド・トイ」に選ばれた「スピードカップス」はいかがでしょうか。グッド・トイは、日本グッド・トイ委員会から毎年選定される良質なおもちゃです。
全員、5色のカップを持ち、カードで指示される色の順番通りに、重ねたり横に並べたりして、いち早く揃えてベルを鳴らした人がカードをもらえます。お題カードをめくって、色のカップを並べて……と続けていき、お題カードを一番たくさん集めた人が勝ちです。

菊地さんと「スピードカップス」をやってみました。最初はうまくカップが並べられなかったのですが、慣れてきてカードをゲットできると嬉しい!
菊地さんと「スピードカップス」をやってみました。最初はうまくカップが並べられなかったのですが、慣れてきてカードをゲットできると嬉しい!

— 瞬発力、判断力が鍛えられますね(笑)。

菊地♣ そうなんです。正解がわかりにくいカードもありますが、みんなでワイワイと決めたらいいんです。それもみんなでやるゲームの楽しさですから。これは早い者勝ちのゲームですが、ゲームって結構、得意不得意があるんですよね。

— おもちゃを通して、子どもの得意分野もわかりますね。

菊地♣ そうなんですよ。もうひとつのおススメは「キャプテン・リノ」。これも2014年のグッド・トイに選ばれています。これはバランスゲームなので、早い者勝ちの「スピードカップス」とはまた使う能力を使います。
ひとり5枚カードを配ります。そのカードを床にして、カードに描かれた位置に別の折り曲げたカードを壁や柱にして乗せていきます。順番にカードを積み上げていき、崩した人は負けになります。手持ちのカードが先になくなった人が勝ちです。

カードにキャプテン・リノのマークがあったら、小さい人形のキャプテン・リノも乗せなければならない。高く積み上げられると不安定でスリリング。思った以上に燃えます(笑)。崩れる瞬間もかなり盛り上がる!
カードにキャプテン・リノのマークがあったら、小さい人形のキャプテン・リノも乗せなければならない。高く積み上げられると不安定でスリリング。思った以上に燃えます(笑)。崩れる瞬間もかなり盛り上がる!

大人がおもちゃを楽しんでしまうのが一番!

— 木のおもちゃで何かおススメはありますか。

菊地♣ 「へんてこどうぶつえん」という木のパズルは面白いですね。こちらも2014年のグッド・トイに選ばれています。キタキツネ、ホッキョクグマ、ユキヒョウ、カピバラ、アムールトラなど北海道の旭川動物園にいる8種類の動物たちの顔が3つに分かれていて、それを組み合わせて遊びます。目にも楽しいいしイメージも膨らみますね。組み合わせてできた言葉もへんてこで楽しい! 「アムーキマ」「ユキクグラ」とか。
子どもっぽいと思うかもしれませんが、小学生になっても、こういうおもちゃでかなり遊びますよ。「こんな単純なおもちゃでこんなに!?」というくらいに。

— ご自身の子育ての中では、どのように活かされていますか。

菊地♣ おもちゃコンサルタントの紹介するおもちゃは、自分で手を動かしたり考えたりしなければ動かないシンプルなおもちゃが多いです。同じおもちゃでも年齢が違えば遊び方も変わります。赤ちゃんの頃は「これしかできない」と思っていたことが、成長するとイメージを膨らませたり、何かを作り上げたり工夫するようになって「こんなことができるようになった」と気がつくことがたくさんあります。子どもの成長がよくわかったことは、とてもよかったですね。
もう長男は中学生、次男は小学校高学年ですが、「こんなふうに一緒に遊んだなあ」という、思い出もいっぱいできました。

「菊地さんがキクラシさんになっちゃった〜!」と言うおもちゃ美術館のスタッフの声に、照れながら顔にパズルを当ててくれた菊地さん。こんな遊び方も楽しい。
「菊地さんがキクラシさんになっちゃった〜!」と言うおもちゃ美術館のスタッフの声に、照れながら顔にパズルを当ててくれた菊地さん。こんな遊び方も楽しい。

菊地♣ 子どもを惹きつけるおもちゃの三大ポイントは「アクション・チェンジ・サウンド」なんです。自分が行動して、それによって変化が起きて、音がする。自分で考えたり、手を動かして工夫するもの、みんなで遊んで楽しい、コミュニケーションがとれるものがいいですよね。
迷ったら自分で楽しそう、と感じたおもちゃを買うのが一番いいと思います。大人でも面白いものが本当にたくさんあるんですよ。子どもに「つきあってあげてる」のはつまらないじゃないですか。大人も楽しいのがいいですよね。一緒に楽しめる遊び、おもちゃを知っているのと知らないのでは、子どもと過ごす時間が全然違ってくるんじゃないかなって思います。

— お母さんは面白い遊びを知ってる、と思ってくれたらいいですよね。菊地さんの活動の原動力って何でしょう?

菊地♣ とにかく楽しいこと、やりたいことしかやっていないということでしょうか(笑)。野望とか全然ないんですよ。おもちゃや木育を伝えるのも楽しいし、この活動を通していろいろな人と出会えることも財産です。

— おもちゃが好き、木が好き、学生が好き、と言う菊地さんの、全身からあふれる“楽しい!”オーラと笑顔に、こちらまで楽しくなってしまいました。「大人が楽しむのが一番」という菊地さんの言葉通り、“子どもにいいものを与えなければ”と肩肘張らずに、大人が一緒になって楽しむ、こんな楽しいものがあるよ、と子どもに教えてあげる、そんなスタンスがいいのかもしれません。

First Posted : 2014.12.15 on "clover&"

PROFILE

菊地 三奈 [きくち みな]

おもちゃコンサルタントマスター(認定NPO法人日本グッド・トイ委員会)。

2006年に自宅での親子サロン「mother’s spaceミーナ」を立ち上げる。北海道のおもちゃコンサルタントで構成する北海道グッド・トイ委員会代表。北海道認定・木育マイスターでもあり、講座やイベントなどを通して「おもちゃ」「木」の大切さを伝えている。幼稚園教諭二種免許、保育士資格所持。保育士養成学校の講師も務める。中1・小4男子の母。http://happymina.com/

〈近況〉ブログ:ミーナ de HAPPY


writer’s profile

上原千都世 エンタメ情報誌の編集を経てフリーに。「エンタメ・暮らし・子ども」などをキーワードに雑誌・書籍・webサイトで執筆中。

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