認定NPO法人日本グッド・トイ委員会の資格「おもちゃコンサルタント」「おもちゃコンサルタントマスター」を取得、北海道で活動中の菊地三奈さん。北海道認定の「木育(もくいく)マイスター」の資格もお持ちです。優良なおもちゃや、遊びをバランスよく与えることのできる“遊びの栄養士”として、イベントを開催したり、自宅での子育てサロンを主催するなど「おもちゃ」と「木」の魅力を伝えています。会議のために上京された菊地さんに、東京おもちゃ美術館で話を聞きました。
スイスの美しい積み木との出会いがきっかけ
— 「おもちゃコンサルタントマスター」として、どんな活動をしているのですか。
菊地♣ 自宅サロンでおもちゃの講座をしたり、区など行政や団体から依頼されておもちゃ講座を開いたりしています。保育士の専門学校でおもちゃについて講義もしています。お子さん、お母さん、保育科の学生さんなど幅広い年齢層の方に、おもちゃの良さを伝えています。
— なぜ「おもちゃコンサルタント」に?
菊地♣ 私は、東京で8年間保育士をしていました。実は勤めていた保育園でも、仕事が終わってから、おもちゃコンサルタントの資格を取るために講座に通っている同僚がいたので存在は知っていましたが、資格を取ろうとまでは思わなかったんですね。
その後、長男を出産、夫の転勤が決まったのを機に保育士を辞めて札幌に引っ越しました。移り住んだ札幌で、ある時長男を託児にお願いすることになったんです。そのとき託児室にあったのが、スイスのネフ社の「アングーラ」という積み木です。色も形もとても美しくて「おもちゃって何て素敵なんだろう!」と感動。そこで出会った託児担当の方からのご縁で「おもちゃコンサルタント」の資格と講座について教えていただき、すぐ資料を取り寄せました。
— 資格はどうやって取得されたのですか。
菊地♣ 講座は、認定NPO法人日本グッド・トイ委員会が運営する東京の「おもちゃ美術館」で開講されていたのですが、私は北海道に住んでいますし子育て中でしたから、通信教育で資格を取得しました。
おもちゃや木でママたちの育児を少しでも楽しく、心豊かに
— 菊地さんは「木育(もくいく)マイスター」の資格もお持ちです。こちらはどんな活動をされているのですか。
菊地♣ 子どもたちに「木は世の中にたくさんあるよね。木を切っておうちを立てたり、こうやっておもちゃにもなるよね」と教えながらおもちゃで遊んだり、親子向けには、お母さんたちに木のことを話しながら、カスタネットなど木のおもちゃを一緒に作ったり、幼稚園や保育園の先生に木についての研修をしたり、「おもちゃ」「木」をキーワードに、いろいろな世代の方に「木で育てることの良さ」を伝えています。
≪木育おもちゃの広場≫という大規模のイベントでは、木のおもちゃ作家さんをお呼びしました。
— 木のおもちゃを触ると何だかホッとしますね。
菊地♣ 木に触れるって心地よいですよね。私は自分が自然に囲まれた幼稚園に通っていて、保育士になったときも、その系列のたくさん木のある保育園に就職しました。子どもたちも毎日森の中で過ごすような幼稚園で育ててきたので、木がいつも身近にありました。木を使った部屋で心地よく過ごすことも、木に触るのも、木について考えるのも、木のおもちゃで遊ぶのも全て「木育」につながります。
— 子育てサロンができるようにと建築したご自宅も木をふんだんに使われているとか。お母さんたちがリラックスできる空間を作りたいという思いがあるのでしょうか。
菊地♣
自宅サロンや講座などで、それまでプラスチックのおもちゃが育児の中心だったお母さんが「木のおもちゃって素敵だな」「木に触れたらこんなに気持ちいいんだ」って気がついてくれると嬉しいですね。子育てって大変じゃないですか。子育てを少しでも楽しくするには、お母さんが楽しくて元気な方がいい。私の伝えたことで、お母さんたちが今までと違う視点が増えて、次の日から子育てが楽しくなって、心が豊かになってくれたらいいなと思いながらいつも活動しています。
シンプルなおもちゃは子どもの成長がよくわかる
— 活動を通して嬉しいこと、やりがいを感じることは何ですか。
菊地♣ お母さんたちや子どもたちに伝えることはもちろん、保育科の学生たちに「習ったことを保育実習で活かしたら、こんなふうに子どもたちとおもちゃで楽しく遊べました!」と言ってもらえると伝えてきてよかったな、と思います。日本グッド・トイ委員会の資格を取得した教え子が「勤めている園でおもちゃの購入を任せてもらえました!」と報告してくれたり。今はそんなことが嬉しいですね。人が成長していく姿を見ることが好きなんです。
— ご自身の子育ての中では、どのように活かされていますか。
菊地♣ おもちゃコンサルタントの紹介するおもちゃは、自分で手を動かしたり考えたりしなければ動かないシンプルなおもちゃが多いです。同じおもちゃでも年齢が違えば遊び方も変わります。赤ちゃんの頃は「これしかできない」と思っていたことが、成長するとイメージを膨らませたり、何かを作り上げたり工夫するようになって「こんなことができるようになった」と気がつくことがたくさんあります。子どもの成長がよくわかったことは、とてもよかったですね。
もう長男は中学生、次男は小学校高学年ですが、「こんなふうに一緒に遊んだなあ」という、思い出もいっぱいできました。
— 小学生になると、どうしてもDSやテレビゲームなど電子ゲーム機に関心が向いてしまいがちです。
菊地♣ 自宅サロンやイベントなどで、小学生もお預かりすることがあるんですけど、ボードゲームを出して遊んでいると、ゲーム機を持ってきた子も「あれ? 何だかみんな楽しそうだなあ」って寄ってきて気がつけば夢中になって一緒に遊んでいます。最後はDSを忘れて帰りそうになったり(笑)。
子どもたちは「知らない」から遊べないんですよね。小学生でも楽しめるボードゲームやカードゲームって、たくさんあるんですよ。ゲーム機以外にもこんな楽しい遊びがあるんだ、みんなで遊ぶと楽しいな、ということを大人が子どもに教えてあげられるといいのかなと思います。
*「我が家にもDSはありますよ」と言う菊地さん。後編では、そんな菊地さんご自身の経験とおもちゃの専門家としての立場から、ゲーム機とのバランスよい付き合い方についてうかがいます。クリスマスシーズンに向けて、小学生も楽しめる「よいおもちゃ」も紹介していただきます。お楽しみに!
First Posted : 2014.12.8 on "clover&"