家事&暮らしニュースサロン

vol.28

 TPPで変わるのは暮らし? それとも・・・。 暮らし学舎。 前田真理

日本も参加して進められていた環太平洋連携協定(TPP)交渉が、10月、大筋合意に達しました。発効すれば、全世界の国内総生産(GDP)の約4割を占める、巨大な経済圏が誕生します。
TPPは、環太平洋に位置する参加11カ国において、国内産業を保護している現状を見直し、モノやサービス、投資などの自由な行き来をすることで、参加国の経済発展を目指そうとするもの。

合意内容の発表によると、関税に関しては、日本が輸入する農林水産物と工業製品を合わせた全9018品目で、最終的には95.1%の関税が撤廃されるとのこと。これにより、私たちの生活はかなり大きな影響を受けそうです。
巷では様々な検証がありますが、かいつまむと、関税がなくなることで、輸入品が安く、輸出がしやすくなる。つまり、自由貿易により、輸出者や消費者がメリットを受け、輸入品と競合する国内生産者がデメリットを受ける、ということに。
輸入品と競合する国内生産者の多くは農業関係者。私の住む鹿児島は全国有数の農業県であることから、不安な声が多く聞かれますが、みなさんの周りでは、歓迎ムード、不安ムード、どちらの声が多いでしょうか。

日本のこの10年の消費生活を振り返ると、格差の拡大とともに、安心・安全への関心の定着があります。特に食料品では、以前は産地など気にしなかったのに、いつの間にか産地チェックが当たり前になったなぁ、という方も多いのでは。外国産の農作物が安く輸入されるようになっても、すぐさま家庭で大量購入されるというより、原材料が見えにくい、外食や中食産業、中でも手軽な店での導入が進みそう。それらの店では価格が下がり、高い店と安い店の両極化はさらに進みそうです。
最も懸念されているのは、農業の衰退。現在も食料自給率40%という危うい日本なのに、TPPによる価格競争で農業経営が困難になり、自給率がさらに下がるのではないか、というわけです。

一方、貿易の自由化により、消費者の意向がより正確に反映され、市場原理に乗った生産・流通となる可能性もありそう。例えば、食生活の変化から脂肪が敬遠されがちな今も、刺しがたっぷりと入った牛肉が最高級として高値扱いされる状況などには、変化があるかもしれない、と思ったりします。

消費者の意向を表現するのは、その行動。「TPPで暮らしはどうなる?」といった受け身姿勢ではなく、より自分の頭で考え、行動することを求められる世の中に。それがTPPによる大きな変化かもしれません。

First Posted : 2015.11.18 on "clover&"

PROFILE

前田真理

フリーランスライターの傍ら、「暮らし学舎。」を主宰。
家のコトを家族や仲間とシェアして、幸せ感ある心地よい暮らし方を見つけよう!と活動中。
暮らしに関する講座を開くほか記事やFacebookで情報発信している。「暮らし学舎。」FBは、https://www.facebook.com/kurashigakusya

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