vol.24
ペンギン夫婦の作りかた 上原千都世中国人である夫が、カメラマンとして所属していた出版社の倒産で無職になったのを機に、夫婦で石垣島を訪れたフリーライターの歩美。島にすっかり魅了された歩美は、夫と共に東京から移り住むことに。その後、夫が帰化申請をすることになり、夫婦で面談に臨みます。移住のきっかけ、東京での仕事のこと、島での暮らしぶり。偽装結婚を疑われてしまう夫妻ですが、実は料理好きのふたりは、地元の食材を使った手作りラー油を販売しようとしていたのでした。
「食べるラー油」ブームのきっかけとなった「石垣島ラー油」を生み出した夫婦の実話が元になっています。食べるラー油誕生秘話、というよりは、ヒット商品を生み出した夫婦が、日本でたったひとつしかない苗字「辺銀(ペンギン)」を名乗るようになるまでの物語です。
ちょっと強引だけど、ポジティブで行動的な歩美。そんな奥さんに何度も驚かされながらも明るく受け止める夫、暁江(ギョウコウ・中国読みでシャオジャン)。帰化申請の面談シーンを通して、ふたりの出会い、東京から石垣島に移り住んだ理由、島での仕事や地元の人々との温かい交流、ラー油作りのきっかけ、など「夫婦のこれまでの軌跡」が徐々に明らかになっていきます。
フリーマーケットで石垣島の厳選した食材を使ったラー油を販売することにしたふたり。昼間は歩美は食堂で、ギョウコウはウコン畑で働き、帰宅後は毎晩ラー油のレシピ開発に励みます。味には自信があったのに全く売れず。売れ残ったラー油を知り合いに配りまくったことで、大量注文が入りますが……。
注文をこなすため知人総出でラー油作り。それを島民を巻き込んだ麻薬など危険物製造と勘違いされ、偽装結婚を疑われていたことを知り夫婦はびっくり。帰化への道のりは険しいと思われましたが、島や食への情熱、「辺銀(ペンギン)」という苗字に込められた歩美の想いが、疑念だらけだった面談担当職員の心を動かしていきます。
「ペンギンは一番好きな動物。でもそれ以上にペンギンは一度夫婦になったら死ぬまで相手を変えないから」。「世界でたったひとつ」の夫婦の作り方、家族のあり方について考えさせられます。
ギョウコウが作る中華料理、皮から作るギョーザや郷土料理など、おいしそうな料理の数々は、石垣島で食堂を経営するホンモノの辺銀夫妻によるものだそう。ちょっぴりカラくてコクがある、まさにラー油のような味わいに、心があったかくなる映画です。
First Posted : 2015.6.23 on "clover&"