幸食健美シネマナビ

   [amazon.co.jpへ]

vol.23

 西の魔女が死んだ 上原千都世
あらすじ
中学に入学して間もない頃、学校へ行くのが辛くなってしまった少女まい。しばらくの間、ママの故郷である田舎でひとり暮らしをしているおばあちゃんと一緒に過ごすことにします。大好きなおばあちゃんから教わったのは規則正しい生活をする大切さ。家事でからだを動かしているうちに、まいの心もほぐれていきます。しかしあることがきっかけで、ふたりは大ゲンカ、まいはわだかまりを抱えたまま、おばあちゃんの元を去ることになってしまい……。

不登校になってしまった少女が、森の中で暮らすおばあちゃんと日々の生活を営む中で“生きる力”を取り戻していく物語。1994年の発売以来、長く愛されてきた同名小説の映画化です。

感受性が強く、生きづらさを抱えたまいの“そのまんま”を受け入れてくれる、包容力にあふれたおばあちゃんとの温かい交流が描かれていきます。草木や自然に関する知識や生きる知恵、物事の先を見通す不思議な力を持ち、ママが“西の魔女”と呼ぶおばあちゃんのようになりたい、と言うまいに言い渡された“魔女修行”は、ごくごく当たり前の生活を送ることでした。

「早寝早起き、食事をしっかりとって、よく運動、規則正しい生活をすること」。そして「一番大切なのは自分で決める力と、自分で決めたことをやりとげる力です」。掃除、洗濯、料理に畑仕事。卵は鶏小屋から自分でとってくる。野原一面に広がるワイルドベリーを摘み、庭先のかまどに大鍋をかけてジャム作り。洗濯機ではなくたらいでシーツを踏み洗い、干すのは物干し竿やロープではなく、ラベンダーの香り広がる草の上で。やわらかい太陽の光、満点の星空。大自然の中で魔女修行という名の家事エクササイズに励みながら過ごす、人生の休暇のような日々は、生きることに疲れていたまいに「楽しく生きる喜び」を教えてくれるのでした。不本意な別れを後悔するまいに残された、おばあちゃんの“最後のメッセージ”にも、おばあちゃんの変わらぬ愛がいっぱい詰まっていました。

心地よい空気や匂いまで伝わってくるようで、ヒーリング効果抜群。胸の奥に響く素敵なセリフもいっぱいです。生きていくための軸のようなものを教えてくれる、心に栄養をたっぷりもらえる映画です。

First Posted : 2015.6.9 on "clover&"

作品情報
監督:長崎俊一 原作:梨木香歩
出演:サチ・パーカー/高橋真悠/りょう/大森南朋/高橋克実/木村祐一
〔2008年/日本/1時間55分〕

 

PROFILE

上原千都世

ライター、コラムニスト。
エンターテイメント情報誌「weeklyぴあ」映画担当を経てフリーに。エンタメ界での経歴、子育てなどの経験を活かして現在は「エンタメ・暮らし・子ども」などをキーワードに雑誌・書籍・web問わず執筆。「こども映画プラス」 「ウレぴあ総研」などに寄稿。

Share Buttons

Share on FacebookShare on Google+Tweet about this on Twitter