料理研究家 鈴木佳世子さん(前編)

からだも気持ちも元気にしてくれる 野菜のパワーで 毎日、明るく前向きに! TEXT by 鈴木麻由美 PHOTO by 菊池陽一郎

自宅での料理教室「ks-café」のほか、各地での料理教室、イベントやセミナーの開催など、多方面で活躍中の料理研究家・鈴木佳世子さん。野菜ソムリエの資格を持つ、野菜の専門家でもあります。漆喰の塗り壁に木目の家具、素朴で温かみのあるインテリアがすてきな自宅にお邪魔し、お話を伺いました。

PTA仲間にごちそうしたのがきっかけで、料理教室がスタート

— 料理の仕事を始めたきっかけを教えてください。

鈴木♣ 私は関西出身で、横浜には夫の転勤で17年前に越してきました。当時、子どもが小学生で、転入した小学校ですぐに役員決めがあったんですが、なかなか決まらなくて。みんなシーンと黙りこくっている中で、ふっと先生と目が合ったら、すごく困った顔をしてらして。「引っ越してきたばかりで何もわからないんですけど、逆にいろいろ覚えられるきっかけになるかもしれないので、やります」と、お引き受けしたんです。
その年の役員さんがみなさん、とてもやさしくてよい方ばかりだったんです。すっかり仲良くなって、役員会が終わったあと、このあたり食べるところが何もないので、「じゃあ、よかったらうちで、スパゲッティくらいならできるので」という感じで、食べていただいたんですね。そうしたら、「すっごくおいしい! ぜひ教えてほしい!」と。
「じゃあ、いっしょに作って食べましょうか」ということで始めたんですが、そうするとみなさん、手土産などいろいろ気を使ってくださるんです。なんか悪いなと思っていたところ、みなさんのほうから「友だちで来たいという人もいるし、きちんとお金をとって教室の形にしてくれたほうが気が楽だから」と言われ、料理教室としてスタートしたんです。

生活の中に小さな楽しみを見つけるのが好き、という鈴木佳世子さん。Ks-caféという教室名は「気軽にいけるカフェのような場所にしたい」との思いで名づけた。
生活の中に小さな楽しみを見つけるのが好き、という鈴木佳世子さん。Ks-caféという教室名は「気軽にいけるカフェのような場所にしたい」との思いで名づけた。

— それまでに、どこかで料理の勉強をされていたのですか。

鈴木♣ 関西にいたころ、マンションに「イタリア料理教室を始めます」と言うチラシが貼ってあり、ちょうどそのころイタ飯ブームだったので「いいな」と思って、気軽な気持ちで習い始めました。先生は、長くイタリアに住んでいらして、あちらで出産もされたという、とても魅力的な方でした。
教室の形にするときに、この先生にも相談したんですが、「新しい土地に行って、人とつながっていけるチャンスだから、絶対にやったほうがいいわよ」と。先生が背中を押してくださったのが心強かったです。

「簡単で、気軽に作れて、おいしくて、ちょっとおしゃれ」がコンセプト

— 料理教室では、どのような料理を教えていらっしゃるのですか。

湯むきして蜂蜜につけたプチトマトは、デザートにおすすめ。ベランダで育てているミントの葉をちょっとのせておしゃれに。
湯むきして蜂蜜につけたプチトマトは、デザートにおすすめ。ベランダで育てているミントの葉をちょっとのせておしゃれに。

鈴木♣ 特別な料理ではなく、ふだんの生活で気軽につくれるもの――たとえば、野菜の小皿数品に、メイン、パスタあるいはごはんもの、デザートなどで、1回にだいたい5~6品を教えています。
簡単で、そのへんで売っているような食材で作れて、それでいておいしくてちょっとおしゃれ、というのがコンセプトです。「今日、教わって今日、作る気になる」ような。始めた当初から、いまもそれは変わっていません。

— その後、どのような経緯で活動の幅を広げていらしたのですか。

鈴木♣ 最初のころは、毎月1回、来ていただくようにしていました。2年間、計24回で卒業していただくようにプログラムを考えました。
でも、毎日はできないじゃないですか。そうしたら2年待ち、3年待ちの人もでてきて。「なかなか行かれないから、余計行きたくなる」みたいに、うわさがうわさを呼んで、どんどん生徒さんが増えていきました。
そのうちに、外の方からもお教室を頼まれるようになりました。いちばんはじめは、「らでぃっしゅぼーや」。それを皮切りに、ららぽーと横浜ができたときに「イベントで料理教室をやらないか」と声をかけていただいたりして、ぐっと活動の幅が広がりました。

家族、そして自分の病気。アクシデントに見舞われて

— 順風満帆ですね。

鈴木♣ そのころ、自宅のキッチンは吊り戸棚があって、昼間でも電気をつけなくてはいけないような暗い造りだったんです。どんどん生徒さんも増えていることだし、この吊り戸棚を取っ払って明るいキッチンにしたいなと思い、リフォームを考えました。
通っていた美容院が素朴な感じのすごくすてきな内装で、「こういうのって、どういう大工さんにお願いするんですか」と聞いたら、紹介してあげる、と言われて。それで、その大工さんとお話しているうちに、キッチンだけじゃなく、ここも、ここも、と気になるところが出てきて。家中、大改装することになりました。
参加型のリフォームだったので、壁はほとんど私が塗ったんですよ! 作りつけの戸棚は既製品だと高いしイメージに合うものがないので、大工さんに作っていただいたり、壁を少し盛り上げてからニッチ棚を作ったり、あれこれこだわって仕上げました。

リフォームして明るく、使いやすくなったキッチン。
リフォームして明るく、使いやすくなったキッチン。

ところが、そんな調子のいいときに、大阪の父が脳梗塞で倒れたんです。それまでも糖尿病でインスリン注射を打っていたんですけど、倒れた後遺症で認知の症状が出て、自分で注射が打てなくなってしまったんですね。それで、私が介護に通うことに。自宅での料理教室は全部キャンセルし、外の仕事だけ少し残して、東京と大阪を行ったり来たりの生活を始めました。
そうしたら、3か月ほどたったところで、今度は私が大病にかかってしまったんです。あっという間に入院、手術と大変なことに。そのどん底のときに思ったのが、やはり健康がいちばん大事だということ。それで、少し体調が落ち着いてから、自分や家族の健康のために、野菜ソムリエの講習に通い始めたんです。

*野菜ソムリエの勉強を始めた鈴木さんが次にとった行動は? 後編に続きます。

First Posted : 2014.7.22 on "clover&"

PROFILE

鈴木 佳世子  [すずき かよこ]

料理研究家
日本野菜ソムリエ協会認定料理教室「ks-café」主宰。1961年大阪生まれ。1997年より、横浜の自宅で料理教室を始める。2006年より「らでぃっしゅぼーやスタジオ@青葉台」講師、2007年より「ららぽーと横浜lala club」講師。

〈近況〉2016年2月現在、らでぃっしゅぼーや新宿本社講師。「危機管理教育研究所認定 防災クッキングアドバイザー」でもある。
ブログ:鈴木佳世子のお料理教室


writer’s profile

鈴木麻由美 女性のライフスタイル全般および育児・保育・教育関係を中心に取材・執筆。

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