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vol.12

 THE有頂天ホテル 上原千都世
あらすじ
年越しまであと2時間。「ホテルアバンティ」では、老舗ホテルの威信をかけたカウントダウンパーティを成功させようとホテルマンたちが忙しく走り回っています。しかし次々とトラブル発生。何度追い払ってもコールガールが侵入、宿泊客の汚職議員を追うマスコミ、謎の白塗り男の出現にあちこちでパニックが起こり、パーティに出演する芸人の飼うアヒルが脱走! さてカウントダウンパーティは無事に開催できるのでしょうか?

1年の締めくくり、大みそかのホテルで起こる様々なトラブルを描くノンストップ・コメディです。

ワケありの宿泊客の対応に追われる中、実はホテルマンたち自身にもハプニングが次々発生。
今日で仕事を辞めシンガーソングライターの夢も諦めて故郷に帰ろうとしていたベルボーイ憲二は、自信を無くした大物演歌歌手に成り行きで自作の歌を披露することに。その歌が思いがけず、ある重要人物の命を救います。
有能な副支配人・新堂は元妻と再会した瞬間、見栄を張ってつかなくてもいいウソをついてしまいます。シングルマザーの客室係ハナは、好奇心で部屋にあった宝石や毛皮のコートを身に着けたことから、その部屋の宿泊客と勘違いされ愛人がらみの揉め事に足を突っ込んでしまいます。
総支配人は、ちょっとしたイタズラ心を起こしたばっかりにホテルの裏側で迷ってしまう始末。

見栄を張ったりウソをついたり。“その場しのぎ”“ついうっかり”の些細な行動が、トラブルを雪だるま式に大きくしていきます。「なぜ今そんなことを!」とツッコまずにはいられないのですが、コミカルなシーンの応酬の中に浮かび上がる人間のちょっとした弱さに苦笑しつつ、登場人物の誰かに共感したり応援したくなったりしてしまいます。何十人ものバラバラの人生が、“大晦日のホテル”という特別な空間の中で、あれよあれよと言う間に絡み合いつながっていく瞬間が面白いのです。

「何のために大晦日があると思うの? 年が替わればいいこともあるわ」。ホテルから徹底的に邪険にされるコールガール・ヨーコが、投げやりになった政治家・武藤田にかけた言葉です。
ホテル、年越し前後という特別な空間と時間に偶然集まった人々が、“少しだけ”成長する物語。来年もいいことがありますように。ほんのちょっと前向きで温かい気持ちになれる、年忘れにぴったりの映画です。

First Posted : 2014.12.22 on "clover&"

作品情報
監督・脚本:三谷幸喜
出演:役所広司/松たか子/佐藤浩市/香取慎吾/篠原涼子/戸田恵子/生瀬勝久
〔2006年/日本/2時間16分〕

PROFILE

上原千都世

ライター、コラムニスト。
エンターテイメント情報誌「weeklyぴあ」映画担当を経てフリーに。エンタメ界での経歴、子育てなどの経験を活かして現在は「エンタメ・暮らし・子ども」などをキーワードに雑誌・書籍・web問わず執筆。「こども映画プラス」 「ウレぴあ総研」などに寄稿。

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