vol.21
企業が変われば、社会が変わる?! 暮らし学舎。 前田真理「出産後も同じように働くことを期待される会社で、働き続けることは難しかった……」と、とあるマスコミを退職した女性に話を聞いたのはつい先日のこと。その後別の会社で活躍している彼女ですが、出産を経て同じ職場で働き続けることに悩む女性の状況は、私が出産した20年前と大差ないのかも、と、ため息をつきながらの会話でした。
育休、イクメン、イクボス、女性がもっと活躍できる場を! ……と、話題となるワードが次々と登場し、大きく変わったかに思える出産育児や女性の労働機会の環境ですが、女性の第一子出産後の継続就業は4割弱で、長期的にあまり変化がないことや、少子化が止まらない数字が、まだまだ現実は難しいことを表しています。
ただ、出産育児と就労がセットで検討されるようになりつつあるのも事実。先月、トヨタ自動車は、「家族手当」を大幅に見直すことを発表しました。これまで月額約2万円支給されていた専業主婦(夫)らの分を廃止する代わりに、子どもの分をおおむね4倍に増額。来年1月以降、段階的に実施する予定とか。片働き家族の応援から、共働き子育て家族を応援する形へ企業の姿勢をシフト。「家族手当」を、企業型「子ども手当」に移行するというわけです。
トヨタでは既に4月からは、1歳未満の子どもがいる社員を対象に週1回2時間の出社以外は家で働ける、在宅勤務制度も導入。これは、基本は出社勤務、例外的に在宅勤務を認めるというこれまで一般的だった在宅勤務制度とは一線を隔し、基本を在宅勤務とするという点で、保育園不足にも対応した現実的在宅勤務と言えそうです。
そういえば数年前、登場しつつも姿を消した「公的子ども手当」もありました。政策はもちろん大切ですが、労働環境に関しては、企業が変わらなければ、名目だけで実際には変わりにくいというのが実感。政府に先んじて企業が、手当配分の変更に乗り出したことは、女性の就労と出産育児の環境づくりに大きな影響がありそう。これは、企業にとっても、人口減による労働力不足、販売マーケット縮小という、背に腹は変えられない局面にあるゆえの英断かもしれませんが……。企業が動き出すことで、社会の変わり目がくっきりと見えてきたようにも思います。
First Posted : 2015.7.29 on "clover&"