
子どものころから始めたオリエンテーリングで、念願の全日本チャンピオンの座を獲得(前編)。これからは、山の遭難事故を少しでも減らすため、地図読み講習に力を入れていきたいそうです。
地図読み講習に力を入れたい
— 田島さんの現在の活動について教えてください。
田島♣ ここ数年は、読図講習の講師やオリエンテーリングイベントのディレクターを務めたり、自分でイベントを企画したりなどの活動をしています。
また、世界チャンピオンレベルの仲間10数名で「チーム阿闍梨(あじゃり)」という任意団体をつくり、そこでイベント企画や講習会を開催したりもしています。
最近、力を入れたいと思っているのは、主に初心者に向けての地図読み講習。アウトドアで楽しく安全に遊ぶためには、地図を読む力が必須だと思うので、登山やトレイルランを楽しんでいる人たちに向けてその力を伝える活動を考えています。
いま、オリエンテーリングや登山、トレイルラン、キャンプなど、山で楽しむ趣味の裾野が広がっているなと感じます。それはとてもよいことだと思いますが、それだけに遭難事故が後を絶たない。
やはり自然相手なのですから、それなりに準備が必要だと思うんです。装備はもちろん、さらに地図が読めれば全然、違う。少しでも多くの人に地図を読む力を伝えることで、山の事故を減らせればいいなと思っています。

地図の基本的な記号とその地形を知ることから
— 初心者が地図を読めるようになるには、どうしたら?
田島♣ まず、コンパスは必須。そのうえで、コンパスの北の方向と地図の北の方向を合わせて、目の前に見えるものを探しましょう。そうしたらいま、自分がどこにいるかがわかるでしょう。
でも最近、初心者にはコンパスを扱うこと自体、難しいのかもしれない、と気づいたんです。まずは、地図の基本的な記号とその地形を知ることが基本かな、と。地図を見て最低限、ここが谷、尾根、頂上、峠、ということがわかれば、山で迷ってしまうことは減ると思うんですよね。尾根を行かなければならないのに谷を進んでいれば、あ、間違ったなと気づけるし。
— 山で迷わないために、何に気をつけたらよいですか。
田島♣ 頂上などの目的地があるのなら、その場所だけでなく、途中でわかりやすいポイントを決めておくことです。地図を見て、いまいる場所がここで頂上に行くまでに、大きな角があるはずだ、水が見えるはずだ、とか。あらかじめ自分が通るルートと距離をイメージしておくだけでも、全然違う。
— 万が一、迷ってしまったときにとるべき行動は?
田島♣ まわりを見ていくつかの情報を見つけて、地図で確認しながら、いまいる場所を特定します。たとえば、谷があって、峠が見えて、だから自分がいる場所はここだな、とか。
あるいは、自分の行動を振り返るのもいいですね。いままで登ってきたっけ、下ってきたっけ、と記憶をたどりながら地図を見て、だから自分はこの範囲にいるに違いない、とか。
いちばんよくないのは、おかしいな、と思いながらもそのまま先に進むことです。人間って、疲れてくると、上りたくも下りたくもなくなってくるので、だんだん自分の都合のよい方向を「こっちに違いない」と解釈してしまうんですね。そうなると、最悪。実は全然違う方向だったりするので、危ないです。

地図から始まる新しい世界へようこそ!
— 田島さんご自身は、プライベートで野山に出かけることはあるのですか。
田島♣ はい。地元の奥武蔵をのんびり歩いたり、夏山をテント縦走したりしています。
単純に、地図が大好きなんですよ。山の地図だけでなくて、街の地図も好きで、ストレスがたまるといろいろな地図を眺めては、ここはどんな地形かな~などと考えて楽しんでいます。そして、機会があれば実際に行って、思っていたとおりの谷が出てきたりするとうれしい!
あと、最近はまっているのが、古地図。明治時代の地図が見られるアプリがあって、それをもとに街を歩くのに夢中です。
たとえば、明治時代の渋谷区近辺の地図を見ながら歩いてみると、渋谷はその地名のとおり谷。そこから尾根に向けて登る道は、現在でも坂。
ちなみに大きな道路は、昔は尾根だったという場合が多いですね。そして新しい幹線道路は、たいてい川。昔の風景に思いを馳せながら街を歩くのは、本当に楽しいです。
先日、読図講習の際に、野山に行かなくても都会で谷や尾根を感じるにはどうしたらいいかな、と考えて、古地図を見ながら講習生と街を歩いてみました。「家は木だと思ってください」なんていいながらワイワイと歩いて、けっこう盛り上がりましたよ。
— 最後に、これからオリエンテーリングや野山歩きを楽しんでみたい女性にひとこと。
田島♣ 地図はむずかしいものじゃないよ! ぜひ地図を読めるようになりましょう! と伝えたいです。
いくつか基本的なことさえ押さえておけば、あとは慣れ。地図が読めれば、自分でコースを設定するなど可能性がどんどん広がります。
地図から始まる新しい世界へようこそ! お待ちしていますよ。

First Posted : 2015.10.13 on "clover&"