オリエンテーリング・インストラクター 田島利佳さん(前編)

地図を自在に読みこなし、野山をフルに楽しもう! Let's オリエンテーリング! TEXT by 鈴木麻由美 PHOTO by 菊池陽一郎

レクリエーションとしても、スポーツとしても楽しめるオリエンテーリング。元全日本選手権チャンピオン、現在はオリエンテーリングのインストラクターや地図読み講習の講師として活躍中の田島利佳さんに話を聞きました。

地図とコンパスを頼りにタイムを競う

—  オリエンテーリングとは、どんなスポーツですか。

田島♣ 野山の中で、地図上に表示された目印のポイントをたどって、ゴールまでのタイムを競う競技スポーツです。その場で渡された地図とコンパスだけを頼りに、より早いルートを見つけ出します。
レクリエーションとして楽しむ場合は、みんなで一斉にスタートしたり、グループで進んだりする場合もありますが、競技の場合は一人ずつ。種目は、スプリント、ミドルディスタンス、ロングディスタンスとあり、女子の場合はスプリントで15分、ミドルで30分、ロングで75分が「優勝設定時間」です。男子は、それぞれもう少し長い時間で設定されています。
一般向けの競技会には、距離や時間などさまざまなレベルがあるので、子どもからお年寄りまで、自分のレベルに合わせて楽しむことができるんですよ。

—  オリエンテーリングには、どんな力が必要とされるのですか。

田島♣ 走る力と、地図を読み取る力ですね。パッと地図を見たときに、一瞬にしてどのポイントからどのポイントに進むのがいちばんよいか判断し、できるだけ速く走るんです。フィジカルだけが強くても勝てないし、ナビゲーション力だけあってもスピードがなければ勝てない。それがほかの競技と大きく違うところで、オリエンテーリングならではの面白さですね。

「オリエンテーリングは、子どもからお年寄りまで楽しめるスポーツなんですよ」
「オリエンテーリングは、子どもからお年寄りまで楽しめるスポーツなんですよ」

地図を見ると立体が浮かび上がってくる

 地図を読み取る力は、どのように鍛えるのですか。

田島♣ とにかく地図に親しむことかな。慣れてくると、地図を見ただけでその場の情景が浮かぶんですよ。平面から立体が、まるで3Dのように立ち上がってくる。

 浮かんできた情景は、実際とほぼ同じですか。

田島♣ 同じということもあるし、イメージと違う! ということもあります。イメージに縛られていると判断を間違えてしまうので、頭を切り替え、実際と照らし合わせながら進みます。

 方向音痴には不利ですよね。

田島♣ 方向そのものは、コンパスがあるので大丈夫。面白いことに、コンパスを持てば道をたどるのが得意な人が、コンパスなしでは全然ダメだったりします。
オリエンテーリング仲間で、渋谷でごはんを食べて、さあ駅はどっち? というときに、みんなそれぞれ違う方向に歩きだそうとしたことも。結局、競技ではいちばん強い人が間違っていたんですよ(笑)。

今日は、指導者向けの研修会で野山に。「このように両側が高くなっているのがすぐわかる場所なら、初心者でも地図と対応させやすいですね」と、指導法を伝える田島さん。
今日は、指導者向けの研修会で野山に。「このように両側が高くなっているのがすぐわかる場所なら、初心者でも地図と対応させやすいですね」と、指導法を伝える田島さん。

子どものころからオリエンテーリングが身近に

 オリエンテーリングが競技スポーツだということは、一般にはあまり知られていませんよね。どんな人たちがどんなきっかけで始めるのですか。

田島♣ 若い人だと、大学でクラブに入って、というケースですかね。年配の人だと、若いころにレクリエーションとして楽しんだ経験のある人たちがもう一度、という感じで始めるようです。
あと最近多いのは、登山をする人たちが、プラスアルファを求めて、というケース。「自分で地図を読みながら、自然を楽しみたい」ということで始める人が増えているような気がします。

 田島さんは、どのようなきっかけで始めたのですか。

田島♣ 私の場合は、父がやっていたんです。物心ついたころにはもう、父について行っていましたので、いつ始めたという記憶はありません。ちなみに父は70歳を過ぎていますが、いまも競技者として活躍しています。
地元は埼玉県の飯能(はんのう)市なんですが、ここがオリエンテーリングの盛んなところで。小学校の校長先生もやっていらして、小学校にオリエンテーリングのクラブを作ってくれました。それで毎週、地図を見たり走ったりしていました。
そして、小学5年生くらいから大会に出るようになりました。初めて出たときは、あまり成績はよくなかったですね。道に迷って「わあ、ここどこだろう」と悲しかった、という思い出がありますから(笑)。

 競技者として、本格的に取り組み始めたのは?

田島♣ 自分の中で真剣に始めたのは、正直、30歳を過ぎてからです。
オリエンテーリング自体はずっと続けており、学生時代はインカレ、社会人になってからもときどき競技会に出たりして、それなりの成績は残していました。でも、どこか学生生活の傍ら、仕事の傍ら、という感じで、本腰を入れてはいなかった。とくに社会人になってからは、仕事に慣れるのに精一杯で、オリエンテーリングに気持ちは向きませんでした。
実はインカレで勝てず、2位で終わってしまったんです。それが悔しくて、いつかもう一度、という気持ちはあったんでしょうね。トレーニングは毎日のようにしていました。夜、走ったり、週末はジムに通ったり、主に体づくり。大会にもときどき出場し、勘がにぶらないようにしていました。
そして、2012年についに全日本選手権でチャンピオンの座を獲得。長年の夢でしたから、それは嬉しかったです。

いつかチャンピオンになりたい」と、社会人になってからもトレーニングは続けていた。
いつかチャンピオンになりたい」と、社会人になってからもトレーニングは続けていた。

*子どものころから始めたオリエンテーリングで、念願の全日本チャンピオンの座を獲得した田島さん。これから力を入れたい活動は? 続きは後編で。

First Posted : 2015.10.5 on "clover&"

PROFILE

田島 利佳 [ たじまりか ]

日本オリエンテーリング協会認定インストラクター。

1971年、埼玉県飯能市生まれ。小さいころ父親に連れられてオリエンテーリングを始め、2012年には全日本選手権チャンピオンに。ここ数年は読図講習およびオリエンテーリング、ハイキング、登山などナビゲーションスポーツのインストラクターやイベントの企画なども手がける。

http://www.rika7.com/

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writer’s profile

鈴木麻由美 女性のライフスタイル全般および育児・保育・教育関係を中心に取材・執筆。

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