写真家 川野恭子(きょん♪)さん(後編)

身近なものでも素敵に撮れる! やわらかい色と光の「ゆるかわ写真」が大人気 TEXT by 鈴木麻由美 PHOTO by 菊池陽一郎

ブログを発端に、趣味から仕事へと道が開けていったきょん♪さん(前編)。不思議なパステル調のテイストが、きょん♪さんオリジナルの「ゆるかわ写真」の魅力です。

ゆるくて、かわいい!「ゆるかわ写真」

—  きょん♪さんオリジナルの「ゆるかわ写真」は、どのようにして生まれたのですか。

きょん♪♣ 教室に通いながら、自分なりの撮り方を試行錯誤していたときに、ブログを見た出版社の方から「本を出版しませんか」というお話をいただいたんです。本のタイトルをどうしようということになり、自分の写真のテイストを表現するのに、「ゆるくて、かわいい」ということから「ゆるかわ写真」という言葉を思いつきました。
そのころから、私なりの「ゆるかわ写真」という体系がはっきりしてきたんですよ。

—  あの不思議なテイストの写真は、どのようにして撮るのですか。

きょん♪♣ 写真の加工は一切せず、カメラの設定だけでこうしたパステル調の色を出しています。最近のカメラはかなりいろんなことができるので、工夫しだいでかなり面白い色が出せるんです。カメラの設定をいろいろ変えながら試行錯誤して、編み出した、というとおこがましいですが、これで私なりのテイストが見つけられたなと思っています。

—  すてきな作風にファンは多いでしょうね。

きょん♪♣ そうですね。アトリエレッスンの生徒さんも「私も、こういうかわいい写真が撮りたい!」ということでいらっしゃいます。
ちなみにレッスンは、女性限定で、和やかな雰囲気づくりを心がけています。レッスンでは1回ごとに「今日は光を撮ってみましょう」などとテーマを決めて、撮影に行ったりしているんですよ。初級クラスではゆるかわ写真が撮れるようになること、中級クラスでは一人ひとりフォトブックを作成することがレッスンの目標です。

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カメラは数台所有しているが、撮影用途によって使い分けているそう。ストラップも手づくりするなど、こだわりが。

身近なものでも、レンズを通して見てみると…

 生徒さんには、どのようなことをお伝えしているんですか。

きょん♪♣ 私自身がそうだったのですが、特別な場所に行かないと、みんなが「すてき!」とか「きれい!」とかいう写真は撮れないと思い込んでいる人は多いと思います。でも、たとえば道端に咲いている花であったり、台所に置いてある雑貨であったり、そういった身近なものでもレンズを通して見てみると、すごくすてきな被写体になるんですよ。そのことに私自身、びっくりしたので、みなさんにもぜひ身近なものに目を向けてみてほしいとお話ししています。

 いま、きょん♪さんご自身は、どのような写真が好きなのですか。

きょん♪♣ 被写体としては、やはり風景や花などです。日常の中の何気ない風景の中で「かわいい!」「これ、好き!」と思った対象を、妖精の世界に入っちゃった、みたいな雰囲気で撮るのが好きなんです。街を歩いていてかわいい雑貨を見つけると、写真に使えそうだな、と思ってつい買ってしまいます。

 雑貨選びは、おもにどちらで?

きょん♪♣ アトリエがある横浜の街はもちろんですが、とくに好きなのは自由が丘です。仕事先で出向いた街でも雑貨屋さんがあれば立ち寄ります。中学生になった娘は部活に夢中でほとんど家にいないので、休みの日にはよく街歩きに出かけ、撮影がてら雑貨屋さん巡りをすることも楽しみのひとつだったりします。

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横浜の山下公園は、アトリエから歩いて10分ほど。「花は大好きな被写体のひとつ」

いつもと違う姿勢で撮るだけで、写真は変わる

 初心者でも、ちょっとすてきな写真を撮るコツはありますか。

きょん♪♣ いちばんわかりやすく、すぐに効果があるのは、いつもと違う姿勢で撮ってみるということです。子どもの写真を撮るときでも旅行先などで風景を撮るときでも、たいていみなさん、立ったままパチリ、という感じではないでしょうか。それをしゃがんだり、近づいたり角度を変えたりなど、いつもと違う姿勢で撮ってみるだけで、写真はだいぶ変わります。
とくに子どもを撮るときは、子どもの目線まで自分もしゃがんで撮るのがおすすめです。あとは、はいチーズ、パチリではなく、あえて「撮るよ」と声はかけず、自然な動きや表情を撮るのもよいと思います。子どもといっしょに遊びながら、話しかけながら、撮っていることを意識しないような感じで撮ると、 お父さんお母さんにしか撮れない写真が撮れるのではないでしょうか。
デジタルカメラは何枚でも気軽に撮れるのがメリット。一枚で決めようとせず、たくさん撮ったなかからベストショットを選んでみてはいかがでしょうか。

 では、これから写真を始めてみたいという女性におすすめのカメラは? また予算は?

きょん♪♣ ある程度、本格的に撮りたいのであれば、一眼カメラで6~7万円くらいでしょうか。そのくらいのレベルのものであれば、最近のカメラは機能的にはどれも成熟しているので、どのカメラでもきれいに撮れると思います。
ですから、どれを選んでもよいのですが、女性という観点で言えば、持っていること自体が楽しくなるように、デザインで好みのものにしてみては。気軽に持ち歩いて、どんどん撮って、楽しんでほしいですね。

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アトリエの一角に飾り棚を設け、かわいらしい雑貨を並べた。「あ、写真に使えそう! と思うと、すぐに買ってしまうんです」

 お話を伺って、なんだか写真が撮ってみたくなってきました。今日は興味深いお話をどうもありがとうございました。

First Posted : 2015.6.1 on "clover&"

PROFILE

川野恭子(きょん♪) [ かわのきょうこ(きょん) ]

写真歴15年。大学卒業後、システム開発の仕事をしていたが、家庭と仕事のバランスをとるためにフリーランスに。作品や撮影ノウハウをブログに掲載していたのがきっかけで、書籍出版や講師の道が開ける。現在はAtelier photo*chocotを主宰し、「ゆるかわ写真家」として活動中。
http://kyokokawano.na-watashi.com/

〈近況〉最新刊は『写真家きょん♪のふわっとかわいい 「ゆるかわ写真」の撮り方ノート』(2015年2月、宝島社)。


writer’s profile

鈴木麻由美 女性のライフスタイル全般および育児・保育・教育関係を中心に取材・執筆。

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