
まるで妖精の国に迷いこんだかのような、不思議なパステル調の色合いが魅力の「ゆるかわ写真」。撮っているのは、主婦から独学で写真家となった「きょん♪」さんこと、川野恭子さんです。趣味から仕事へと道が開けていった経緯や、すてきな写真の撮り方について、話を聞きました。
スタートは「青い空が撮りたい!」
— いま、写真家としてどのような活動をされているのですか。
きょん♪♣ 横浜中華街に借りている私のアトリエで、写真教室「Atelier photo*chocot」を主宰。グループレッスンを月4クラス持ち、初心者から中級者に向けてカメラの扱い方や写真の撮り方などを教えています。あとは、カメラメーカーなどが主催するレッスンの講師や本の執筆、写真雑誌への寄稿などです。その合間に自分の作品を撮って、個展で発表することもあります。
— 写真を撮り始めたきっかけについて教えてください。
きょん♪♣ 15年くらい前、駅に飾られていたポスターの空が青くてきれいで、それに魅せられたのがきっかけです。「どうやって撮るんだろうね」と訊ねたら、「一眼レフカメラかなんかで撮るんじゃないの」と言われて、へえ! 私もやってみようかな? と。思い立ってすぐにカメラを買いに行きました。
それまでも写真を撮るのは好きでしたが、記録程度。知人にもとくにカメラ好きはいなかったので、相談する人もなく、量販店の人に「これがいいんじゃないですか」とすすめられるままにカメラを購入。たしかミノルタのα-Sweetだったかな? いまのようなデジタルカメラではなく、フィルムカメラでした。
当時は、写真の教室というのもそれほど一般的ではなく、とくに女性向けはなかったので、本を買って独学で操作を学びました。趣味のひとつという感じで、花や風景なんかを撮っていました。

勤めを辞めて、写真の道を本格的に
— 当時は、ほかのお仕事をされていたのですか。
きょん♪♣ はい。大学卒業後、正社員としてシステム開発の仕事をしていました。出産したあともフルタイムで勤めていたのですが、子育てをしながら開発系の仕事をするのは無理があると感じるようになり、子どもが4歳のころ会社は辞めて、自宅で仕事をするようになりました。
実は、子育てと仕事でめいっぱいだったころ、写真を撮ることはしばらくお休みしていたんです。コンパクトカメラで子どもを撮ったりはしていましたが、それは記録のためという意識で、作品としての写真ではありませんでした。
というのも、当時、私が撮りたかったのは風景写真で、それは遠出しないと撮れないと思い込んでいたから。ニュースなどで「どこどこで桜の花が満開です」などと聞くとカメラを持って飛んでいく、みたいなことをしたかったのだけれど、子どもがいると遠出はむずかしくて。
それが、子どもの成長とともに生活に少しゆとりが生まれ、また主人がデジタルの一眼レフカメラを購入したこともあり、もう一度カメラを手にしたのが10年ほど前。そこからあらためて、本格的に写真を撮り始めました。

ブログを発端に、縁が縁を呼んできて
— 趣味から仕事へ、どのようにつながっていったのですか。
きょん♪♣ ずっと独学で誰に写真を見せることも投稿することもなく、一人で楽しんでいたんですが、2008年ごろから教室に通い始めたんです。写真雑誌で主催している写真教室で、月1回で3年間。
技術を教えてくれるというより、作品をつくることに重きを置いている教室でした。毎月、テーマを出されまして、それに沿って3枚写真を撮ってくる。教室では、それを発表するという形です。
そこでは、独学では得られなかった、人との出会いがありました。生徒は社会人がメインで、写真雑誌に作品を投稿している人や写真スタジオを経営している人などいろんな人がいて、みなさんそれぞれ自分なりの撮り方がありました。そんなことに影響を受け、私も自分なりの撮り方を見つけたいなと、試行錯誤するように。ブログを始め、人に自分の写真を見ていただく機会も増えました。
そうしたら、あるとき銀座の百貨店が運営するカルチャー教室から「うちで教室をやってみませんか」とお声かけいただいたんです。え! 銀座! いいんですか……という感じで、ちょっとアワアワしながら始めました(笑)。
そこから日経さんに取材をいただいたり、その記事を読んだカメラメーカーの方からご連絡があり講師のお話をいただいたり、縁が縁を呼ぶような感じでどんどん広がっていき、いまに至るという感じです。

*ブログを発端に、趣味から仕事へと道が開けていったきょん♪さん。後編では、きょん♪さん独自の「ゆるかわ写真」についてお聞きします。
First Posted : 2015.5.25 on "clover&"