料理研究家 宮崎里恵さん(前編)

おしゃれでクリエイティブな料理教室は 毎日を楽しくする情報交換の場としても大人気! TEXT by 鈴木麻由美 PHOTO by 三浦健司

東京・世田谷の住宅街で、自宅を開放した料理教室「クッキングサロン リエ」を主宰している宮崎里恵さん。料理を学ぶ場としてはもちろん、日々の生活にキラッとひかるアクセントや新しいアイデアを取り入れて楽しく暮らすための情報交換の場としても人気です。

毎日の食卓をマンネリ化しないテクニックを紹介

— 料理教室では、何を教えているのですか。

宮崎♣ 和食をメインにしたアジア系、イタリアンをメインにした洋風、いずれも家庭料理をベースに、ちょっとおもてなしにも使えるようなメニューが中心です。

— 1992年から、もう20数年も続いていますね。

生徒を迎えるダイニングテーブルのそばの窓辺には、必ず花を生けている。「花を話題に会話が弾むこともあるんですよ」
生徒を迎えるダイニングテーブルのそばの窓辺には、必ず花を生けている。「花を話題に会話が弾むこともあるんですよ」

宮崎♣ はい。当時から変わっていないのは、毎日の食卓にいかにキラッとひかるアクセントや新しいアイデアを取り入れてマンネリ化しないようにするか、というテクニックです。主婦って、いつもいつも毎日の献立に頭を悩ませていて、数人集まればすぐに「ああ、今日何作ろう…」というのが話題になりますよね。そういうときに、こんな手もあるよ、あんな手もあるよ、というような新しい発想をご紹介できればいいな、と思っています。
家事っていうのは、義務だと思うと、とても大変なんですね。でも、自分の個性を生かしてクリエイティブな要素を入れてみようと思えば、主婦業ってとてもおもしろい。そして、家事の中でも料理というのはいちばんウエイトが高いでしょ。イヤイヤやったらつまらない。私がここで紹介したことを「あ、そういえば、あそこでこんなこと教えてもらったからちょっと試してみようかな」と、ワクワクしながら毎日の生活に取り入れてもらえたら、こんなに嬉しいことはありません。

海外生活でおもてなしの達人に

— そもそも、料理教室を始めたきっかけは?

毎月、毎月、新しいレシピを考え続けて20数年。「長年続けているうちに、とくに意識しなくても1時間半でぴたりとつくり終わるレシピが考案できるようになりました」
毎月、毎月、新しいレシピを考え続けて20数年。「長年続けているうちに、とくに意識しなくても1時間半でぴたりとつくり終わるレシピが考案できるようになりました」

宮崎♣ もともと料理は大好きで、学生時代には土井勝先生の料理教室に通ったりしていました。まあ、これは花嫁修業みたいなものでしたが。
大学卒業後は英語の教師になったのですが、結婚したらなかなかフルに働くのはむずかしい。そこで、しばらく家庭料理一般の料理研究家の助手をしていました。同時に、そのころ活躍されていた周富徳さんとか道場六三郎さんなど、いわゆる“鉄人”の料理講習会に参加したりしながら、料理の腕を磨きました。
そのうちに商社マンの主人の転勤で、クウェートに4年間住んだんですね。日本食のレストランもないし、気温40度、50度の猛暑の中でなかなか外で人に会うこともできないので、家でおもてなしをする機会が多くて。毎日のようにお客さまをお迎えするようなことを経験したおかげで、人様にお料理をお出ししたり、お客さまにその場を楽しく過ごしていただいたりするための技が身につきました。
それで帰国後、子どもの関係でいろんな方とお付き合いするうちに、自然と我が家が交流の場になりまして。ランチなど作っておもてなししていたら、みなさんのほうから「料理教室を開いてほしい」と。自然発生的に始まりました。とくに宣伝もしていないのですが、友だちが友だちを呼んで生徒さんが増え、いまに至っています。

— 教室はどのようなスタイルでやっているのですか。

宮崎♣ 私も主婦ですし、自宅を開放してやるので、家族に迷惑がかからないよう教室は平日の昼間のみ。毎月、第一週がレシピを考える週で、第二週から第四週の平日10時半から1時までが教室の時間です。月ごとにレシピを変えて、アジア系の月、洋風の月と交互にくるようにしています。

教室で新たな出会いが生まれるのも楽しい

— いま、生徒さんは何人くらいいるのですか。

宮崎♣ みなさん、だいたい月1回ペースでいらっしゃるのですが、このテーブルが8人まで座れるので、平日15日間でマックス120人の生徒さんまでお受けしています。お年の方が「私は和食のときだけ来るわ」とか、お仕事の都合で来られない月もある生徒さんもいらっしゃるので、だいたい月100人くらいでしょうか。
お友だち同士で参加される方はもちろん、一人で気軽にエントリーされる方も。なかには、いろいろな人とお話できるのが楽しいから、とわざと毎回、日にちを変えて参加される方もいます。そこでまた新しい出会いがあるので、固定のメンバーでやるよりもおもしろいですね。
ほんと、無理をしなくてもお断りするくらい人が集まってくださるのが不思議なんですけど、口コミだけに波長の合う方ばかりなのでやりやすいし、みなさん個性的なのでこちらもおおいに刺激を受けます。生活の中にちょっとしたアート的な感覚を取り入れておしゃれに暮らしたいと思っているのですが、そういう気持ちを共有しながら、楽しくやっています。0901_food02_photo03— 料理は、どのように指導するのですか。

宮崎♣ みなさんほとんどの方が主婦で、花嫁修業というわけではないので、切り方云々を教わるというよりは、私がつくるのを見ていたいとおっしゃるんですね。ですので、デモンストレーション形式で、私が料理するところをカウンターの周りに高椅子を並べて、座って見てもらっています。1時間半で4~5品つくり、最後にみんなでいただきます。
実際、このやり方がいいと私も思いますね。みんなで手を動かして分担してつくるやり方だと、自分が担当したこと以外はわからないじゃないですか。デザートつくってる間に、いつのまにか煮物ができていて、「いったいどうつくったんですか」みたいに。

— ちなみに今月のメニューは?

宮崎♣ 山形のだし、うなぎとそばの上用蒸し、鯵の利休焼きととうもろこしのかき揚げ、抹茶ソルベと、パスタマシーンでつくる生八つ橋。あら、今月は私の中では、かなりトラディッショナルですね。ふだんはもう少し創作料理風のものが多いです。

*20数年間、オリジナルレシピを考案し続けてきた宮崎さん。その情報源は? 後編に続きます。

First Posted : 2014.9.1 on "clover&"

PROFILE

宮崎 里恵  [みやざき りえ]

青山学院文学部英米文学科卒。料理好きから料理研究家の助手やプロの料理人に師事し研鑽を積む。1992年、自宅で料理教室を開き、現在に至る。良い食材を求めて生産地を訪問し、生産者との交流を大切にしている。また、地産地消のコンセプトに基づき、江戸東京伝統野菜の普及やレシピの開発、在来種の食材の普及などの活動もしている。

http://m-rie.com


writer’s profile

鈴木麻由美
女性のライフスタイル全般および育児・保育・教育関係を中心に取材・執筆。

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