vol.32
シェフ!三ツ星レストランの舞台裏へようこそ
上原千都世パリ三ツ星レストランの有名シェフ、アレクサンドルはスランプに陥っていました。そんなとき出会ったのが、天才的な味覚を持つジャッキーです。融通の利かない性格で数々のレストランをクビになり、ペンキ塗りのバイトをしていたジャッキーをアレクサンドルはスカウト。オーナーから「今年、星をひとつでも落としたらクビ」と言われたアレクサンドルは、ジャッキーと共に三ツ星を守るため新しいメニュー開発に取り掛かるのですが……。
どんな有名シェフのレシピも再現してしまう「シェフマニア」と、三ツ星レストランの看板でプライドが高い「ベテランシェフ」。ガンコ者のふたりが、ぶつかりあいながら三ツ星レストランの“星”を守るために奮闘する様子をコミカルに描いています。
誰もが知る有名シェフなのに、若いオーナーに“時代遅れ”と言われてしまうアレクサンドル。新作メニューのアイデアも浮かばず、有能な助手にも次々と辞められてしまいます。困ったアレクサンドルは、友人である前オーナーに相談するため訪れた老人ホームで飲んだスープに驚愕。それはかつて自分が生み出し評判になったスープの味を完璧に再現していました。そのスープを作ったペンキ職人ジャッキーの絶対味覚とレシピの再現力に驚き、自分の右腕として厨房に迎え入れます。
ところがガンコ者のふたりは、お互い譲らず衝突ばかり。最高の味を求めてどんどんアレンジしてしまうジャッキーと、勝手にレシピを変えたことに腹を立てるアレクサンドル。しかしジャッキーの料理が大好評で、アレクサンドルも徐々に彼に信頼を寄せるようになります。アレクサンドルをどうにか引退させたいオーナーをあっと言わせる斬新なメニューを、星取りに影響する“春の審査会”までに完成させなければなりません。
そんな中、もうすぐパパになるジャッキーは、ペンキ屋を辞めてレストランで働いていることを内緒にしていたため、婚約者が激怒。アレクサンドルも20年間仕事ばかりで家庭は後回しにしてきたことを娘に責められてしまいます。それぞれが家族と向き合ううち、「誰かのために作る」喜び、料理の楽しさを改めて確認するのです。
優雅な三ツ星レストランのまさに“舞台裏”である大忙しの厨房や、「分子料理」という“前衛的すぎる流行の料理”と“安定感のある伝統的な料理”の対比もこの映画の面白さ。実在の一流シェフが考案した本格的フランス料理も目を楽しませてくれます。ふたりの珍妙なキモノ変装など、コミカルなシーンも満載。食欲の秋にふさわしい、気軽に楽しめる1本です。
First Posted : 2015.10.20 on "clover&"