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vol.22

 リトル・ミス・サンシャイン 上原千都世
あらすじ
フーヴァー家の娘、7歳のオリーヴの夢はミスコンテストで優勝すること。そんなオリーヴに、美少女コンテスト「リトル・ミス・サンシャイン」の地方予選に繰り上げ当選したという知らせが入り、一家はカリフォルニアを目指すことになります。アリゾナからカリフォルニアへ1泊2日の旅。飛行機代が出せずに古いミニバスで出発するも、いきなり車が故障、バスの中では口論ばかり。一家は無事に会場までたどり着けるのでしょうか?

娘を美少女コンテストに出場させるため、おんぼろバスで旅をすることになった一家の珍道中を描くロードムービーです。それぞれの我が強くバラバラだった家族が、ハプニングだらけの旅を通して絆を深めていきます。

お腹ぽっこり幼児体型のメガネっ子、決して「美人」とはいえないけれどビューティー・クイーンを目指す天真爛漫な少女オリーヴ、奔放すぎて老人ホームを追い出された過去のあるおじいちゃん、家族を嫌い、「沈黙の誓い」を立て筆談のみで会話するお兄ちゃん、役に立たない成功論をふりかざすパパ、そんな家族を何とかまとめようとするママ、そして自殺未遂を起こして同居することになったママの兄で、学者でゲイのフランクおじさん。

個性的すぎてまったくかみあわない状態のポンコツ家族が、ポンコツ車で旅をする、という設定が笑えます。狭いミニバスの中では、さっそく口論が始まり車は故障。ポンコツ家族の旅は前途多難。エンジンをかけるためにドライバーのパパ以外の5人で、バスを押さなければいけないハメになりますが、スタートのたびにいちいち「みんなで協力して」車を出す作業が、バラバラだった家族の心を徐々に近づけていきます。

「負け犬とは、負けるのが怖くて挑戦しないやつらのことだ」「若い時は大いに悩め。高校時代は悩める青春の黄金期だ」。過激な発言と行動で家族を引っ掻き回すおじいちゃんが、ここぞという場面で放つセリフが深い! そしてクライマックスのハチャメチャなミスコン決勝シーン。出場する少女たちの不自然な美しさ(子どもらしさ皆無)、「美」「勝ち」にこだわる風潮を皮肉って笑い飛ばすような「そこまでやる!?」的な一家の行動に、唖然としつつも大笑いしてしまいます。

少々キワドイ会話もありますが、一筋縄ではいかないユーモアと、人間への大らかな愛情にあふれたファミリー・コメディです。

First Posted : 2015.5.26 on "clover&"

作品情報
監督:ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス
出演:アビゲイル・ブレスリン/グレッグ・キニア/ポール・ダノ/アラン・アーキン/トニ・コレット/スティーヴ・カレル〔2006年/アメリカ/1時間40分〕

PROFILE

上原千都世

ライター、コラムニスト。
エンターテイメント情報誌「weeklyぴあ」映画担当を経てフリーに。エンタメ界での経歴、子育てなどの経験を活かして現在は「エンタメ・暮らし・子ども」などをキーワードに雑誌・書籍・web問わず執筆。「こども映画プラス」 「ウレぴあ総研」などに寄稿。

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