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vol.21

 タイピスト! 上原千都世
あらすじ
1958年フランス。都会に憧れ田舎からやってきたローズは、保険会社を経営するルイの秘書に採用されるも失敗ばかりで1週間でクビ確定。しかしローズにタイピングの才能があることを見抜いたルイが、「タイプライター早打ち大会」に出場することを提案します。初めての地方予選で敗退したことをきっかけに、ルイのコーチ魂に火がつき、猛特訓を開始。厳しいトレーニングの末、地方大会で勝利を収めたローズは、強敵の待つパリの全仏大会へ向かいます。

女性が憧れる職業のナンバーワンが「秘書」だった1950年代後半のフランスを舞台に、「タイプの早打ち」が唯一のとりえの平凡なヒロインが、鬼コーチとなった上司と一緒にタイプの技術で世界を目指す物語です。

1本指打法を10本指の両手打ちに。難解な文章の早打ち訓練、そして持久力をつけるためにランニング、リズミカルな指運びのためにピアノレッスン。特訓の末、腕を上げたローズは予選を勝ち抜き、地方大会で1位を獲得、全仏大会も突破してニューヨークの世界大会へ! 秘書としては失敗ばかりでクビも宣告されたローズが、勝利を目指して突き進んでいく姿を素直に応援したくなります。

ルイが友人と賭けをしたことから火がついた「ローズをタイピングチャンピオンにする大作戦」ですが、いつしかローズを育てることに本気でのめりこみ、女性としても愛するようになります。しかし同じようにルイに心を寄せるローズと、ローズの将来を考えて突き放すルイ、ふたりの気持ちはスレ違ってしまい……。

ドジな娘の成功物語。厳しい上司との特訓と恋。ラブコメとスポ根ドラマの王道ストーリーがテンポよく進んでいきます。文字通り火花散る女子同士のタイピング一騎打ちも迫力満点で、「エースをねらえ!」「ガラスの仮面」などに夢中になった覚えのある女性なら、グイグイ惹きこまれてしまうはず。

昔「タイプ早打ち大会」は実際に開催されていたそうです。地位向上に励む女性のライフスタイルや、アメリカへの対抗意識など、フランスの当時の空気感も興味深いです。ポニーテールやAラインのふわっとしたスカート、カラフルなドレスなど50年代ファッションもとってもキュート。ポップな味わいの楽しい一作です。

First Posted : 2015.5.12 on "clover&"

作品情報
監督・脚本:レジス・ロワンサル
出演:ロマン・デュリス/デボラ・フランソワ/ベレニス・ベジョ/ショーン・ベンソン/ミュウ=ミュウ
〔2012年/フランス/1時間51分〕

PROFILE

上原千都世

ライター、コラムニスト。
エンターテイメント情報誌「weeklyぴあ」映画担当を経てフリーに。エンタメ界での経歴、子育てなどの経験を活かして現在は「エンタメ・暮らし・子ども」などをキーワードに雑誌・書籍・web問わず執筆。「こども映画プラス」 「ウレぴあ総研」などに寄稿。

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