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vol.11

 天使のくれた時間 上原千都世
あらすじ
ニューヨーク、マンハッタンの大手金融会社の社長として成功を収めているジャック。クリスマスイブの夜、不思議な黒人青年に出会います。翌朝目覚めるとなぜか全く知らない家のベッドにおり、隣には13年前に別れた恋人ケイトが! 混乱するジャックですが、どうやらこの世界での自分は町のタイヤのセールスマンで、2児の父としてケイトと郊外で幸せな家庭を築いていることを知ります。全く違う生活にとまどうジャックでしたが……。

「もしあの時、違う道を選んでいたら」と、考えたことはありませんか? クリスマスのニューヨークを舞台に、優雅な独身生活を謳歌していたやり手ビジネスマンが、ある日突然、“昔の恋人と選んでいたかもしれないもうひとつの人生”を経験して本当の幸せを見つけるまでを描く、ファンタジックな物語です。

住まいは高層ビルの最上階。高級車を乗り回し、洋服も女性も欲しいものは何でも手に入る。お金も地位も充分にある。そんな生活から一転、郊外の家と小さな町のタイヤのセールス、共働きをしながら子どもの世話に追われる日々に。今までとは正反対の人生を送るハメになり、環境に慣れようと奮闘するジャックの姿が何とも可笑しいです。億のビジネスを動かしていた男が、赤ちゃんのオムツ替えに四苦八苦。でも結婚13年になる妻ケイトとは、新婚時代と変わらず仲良しです。この映画の原題は「THE FAMILY MAN」。それまでの、成功を絵に描いたような人生に1ミリも疑問を感じていなかったジャックが、ファミリー・マンとして過ごす中で今まで味わったことのない心地よさを感じるようになっていくのです。

ジャックは“もうひとつの人生”でも小さなチャンスを見逃さず、培ったビジネススキルを発揮して仕事での成功をつかんでいきます。正反対の人生を体験してそちらのほうが幸せだと気づいた、という単純構造ではなく、ジャックの選択と行動によってかけ離れた二つの人生がひとつになっていくような展開も、この映画の面白いところです。

“家庭での幸せ”“仕事の成功”どちらか選ぶのではなく、どちらも手に入れていい。選択と行動、自分次第で人生は切り拓いていける。そんなメッセージも伝わってきます。小さな奇跡を期待してしまうクリスマスシーズン、この映画で「もしも」の人生に思いを馳せてみてもいいかもしれません。観る人の想像をかきたてるラストも素敵です。

First Posted : 2014.12.9 on "clover&"

作品情報
監督:ブレット・ラトナー
出演:ニコラス・ケイジ/ティア・レオーニ/ドン・チードル
〔2000年/アメリカ/2時間5分〕

 

PROFILE

上原千都世

ライター、コラムニスト。
エンターテイメント情報誌「weeklyぴあ」映画担当を経てフリーに。エンタメ界での経歴、子育てなどの経験を活かして現在は「エンタメ・暮らし・子ども」などをキーワードに雑誌・書籍・web問わず執筆。「こども映画プラス」 「ウレぴあ総研」などに寄稿。

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