vol.10
マルタのやさしい刺繍 上原千都世スイスの山あいにある小さな村。80歳のマルタは夫に先立たれてから9カ月、生きる意欲を持てずに毎日を過ごしています。そんなある日、マルタはふとしたきっかけで若い頃の夢を思い出します。それは、自分でデザインして刺繍をしたランジェリーのお店を開くこと。友人の助けを借りて何とかオープンにこぎつけますが、保守的な村では周囲から笑われたり軽蔑されたりと、なかなか理解してもらえず……。
愛する夫に先立たれ落ち込んでいたおばあちゃんが、80歳にして若い頃の夢を実現しようと奮闘する姿を描いた、ハートウォーミングな人間ドラマです。
夫のために50年以上前に夢を諦めていたマルタ。裁縫が得意だったマルタは、クローゼットに眠っていた箱を見つけ、ランジェリー作りの仕事が好きだったことを思い出します。そしてふさぎがちなマルタを心配した友人が連れ出してくれた都会のランジェリーショップで、「縫製が甘い」「やっぱり機械じゃダメなのよ」と次々と“アラ”を指摘するマルタに友人たちもびっくり。ランジェリーへのこだわり、情熱が思わずあふれ出すのです。パリでお店を出したかったこと、お店はこんな内装で……、と夢を語り出すマルタは、何日か前まで落ち込んでいたとは思えないほどイキイキと輝き、笑顔になっていきます。
でも80歳にして新しいことを始めようとするマルタを応援してくれるのは、最初はたったひとりの友人だけ。密かに準備を進めオープンしたお店も、保守的で伝統を重んじる村では「下着なんていかがわしい」「恥知らず」「いい年して」と、村人からも非難され、息子たちからも猛反対される始末です。
それでもマルタの情熱が飛び火して、最初は「笑いものになるつもりなの?」と言っていた友人たちも、車の免許を取る、インターネットを学びに行く、など新しいことにチャレンジ! 終盤ではインターネットのおかげでマルタのお店は大繁盛。成功してもそれを認めず最後まで反対しているのは、頭の固い男性なんですよね。男性には申し訳ないけどちょっと苦笑してしまいます。
新しいことを始めるのに歳は関係ない。夢はいくつになっても叶えられる。そして女性はやっぱりいくつになっても元気! 行動的なおばあちゃんたちにワクワクと元気をもらえる作品です。美しい刺繍やバルコニーの花たち、スイスの街並み、山に囲まれた美しい自然も見どころです。
First Posted : 2014.11.26 on "clover&"