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vol.8

 ミセス・ダウト 上原千都世
あらすじ
サンフランシスコに住む売れない役者ダニエルは、3人の子供を何よりも愛する父親です。しかし妻のミランダは、仕事も家事もほったらかしで子供と遊んでばかりの夫に愛想をつかして離婚を宣言。生活能力のないダニエルは養育権を奪われ、週に一度しか子供に会えなくなってしまいます。そんなある日ダニエルは、売れっ子のインテリアデザイナーとして忙しいミランダがお手伝いさんを募集していることを知ります。そこで何と初老の婦人に変身して応募、“ミセス・ダウト”として採用され自分の妻子の家で働き始めるのですが……。

子煩悩な父親が、離婚後に子供に会いたいばかりに女装して家政婦として“元自宅”にもぐりこむ、という奇想天外な設定のファミリー・コメディ。思わずツッコみたくなるコントのようなシーン満載で、気持ちよく笑いたいときにおススメの作品です。

家政婦“ミセス・ダウト”になったり、優しいパパに戻ったり。変装のたびに男子トイレと女子トイレを行ったり来たり、かつらやメイク、ストッキングにハイヒール、おばあちゃん体型のボディスーツを慌てて着たり脱いだり。子供や妻にバレないように右往左往しながら、その場しのぎの奮闘を続けるダニエルの姿に大笑い。元妻の恋人出現に嫉妬心丸出しで、家政婦姿で思わず男に戻ったり。あまりにもバカバカしいのですが、ダニエルが必死になればなるほど、彼の家族への想いが伝わってくるのです。

家事がまるでダメだったダニエルも、家政婦仕事をするうちに料理や掃除が得意になっていきます。“ミセス・ダウト”である自分に安心して打ち明けた「妻の本当の気持ち」を知り、自分の過去を見つめ直すことにもなります。そんなダニエルの成長も見どころのひとつ。ただ笑えるだけではなく、夫婦のあり方や親子関係、離婚の現実についても、真正面から描かれているのがこの映画のいいところです。ちょっとビターなハッピーエンドが「幸せな家族の形とは何か」を考えさせてくれます。

残念ながら8月に急死してしまった主演のロビン・ウィリアムズに、実は一度だけ取材をしたことがあります。取材する側も気づかってくれる、サービス精神旺盛な優しい方でした。この映画では、そんなロビンの芸達者ぶりが堪能できます。

First Posted : 2014.10.21 on "clover&"

作品情報
監督:クリス・コロンバス
出演:ロビン・ウィリアムズ/サリー・フィールド/ピアース・ブロスナン
〔1993年/アメリカ/2時間6分〕

PROFILE

上原千都世

ライター、コラムニスト。
エンターテイメント情報誌「weeklyぴあ」映画担当を経てフリーに。エンタメ界での経歴、子育てなどの経験を活かして現在は「エンタメ・暮らし・子ども」などをキーワードに雑誌・書籍・web問わず執筆。「こども映画プラス」 「ウレぴあ総研」などに寄稿。

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