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vol.7

 しあわせのパン 上原千都世
あらすじ
りえさんと水縞くんの夫婦は、東京から北海道の月浦に移り住み、洞爺湖が見渡せる丘の上で「パンカフェ・マーニ」を営んでいます。水縞くんがパンを焼き、りえさんが料理を作りコーヒーを淹れる。宿泊施設を備えたカフェ・マーニには、ご近所さんから旅行者まで、いろいろなお客様がやってきます。北海道を出られない青年、彼氏に沖縄旅行をドタキャンされた女性、ギクシャクした父親と少女、ワケありの老夫婦……。それぞれ事情を抱えた人々が、「マーニ」で見つけた小さなしあわせとは?

北海道の雄大な自然の中にぽつんと建つ一軒家風のカフェ「マーニ」を営む夫婦「りえさん」「水縞くん」。そのカフェに導かれるように集まってくる人々との交流を、四季の美しい自然の移り変わりと共に描いています。

ちょっと人生につまづいた人々が、カフェに流れるゆったりした空気と、すべてを受け入れているようなふたりのおもてなしを受けて、少しずつ元気になっていきます。心のこもった料理が、人々の心をつないでいく。釜から出したばかりのパンの香ばしい匂い、コロッケにフォークをサクッと刺した時の音、ネルドリップで丁寧に淹れたコーヒーの香りなどが画面の向こうから伝わってくるよう。五感も刺激され、とってもしあわせな気分になります。

美味しい料理に、自然素材のインテリアなど女子ゴコロをくすぐる要素が満載。おとぎ話のよう、現実にはそんな風に暮らせないよ、なんて思ってしまう方もいるかもしれません。でも「好きなことがしたいって思ったんです。好きな場所で好きな人と」と言う水縞くんの言葉はうらやましくもあり、自分は好きなことができているかな?とふり返りたくなります。

「電車は簡単に切り替わるのに、オレの人生は簡単には切り替わらない」「カッコ悪い自分を知っている人が大人だと思う」「乾杯の数だけ幸せになれる。いいことがあったら乾杯、残念なことがあっても乾杯」……など心に沁みるセリフがいっぱい。肩の力を抜いてふーっと深呼吸したくなる。心に優しい映画です。

First Posted : 2014.10.7 on "clover&"

作品情報
監督・脚本:三島有紀子
出演:原田知世/大泉洋/森カンナ/平岡佑太/あがた森魚/余貴美子
〔2012年/日本/1時間54分〕

 

PROFILE

上原千都世

ライター、コラムニスト。
エンターテイメント情報誌「weeklyぴあ」映画担当を経てフリーに。エンタメ界での経歴、子育てなどの経験を活かして現在は「エンタメ・暮らし・子ども」などをキーワードに雑誌・書籍・web問わず執筆。「こども映画プラス」 「ウレぴあ総研」などに寄稿。

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