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vol.6

 最強のふたり 上原千都世
あらすじ
パリの大富豪フィリップは、事故により首から下が動かない重度の障害を抱えています。そんなフィリップの介護者選びの面接に突然現れた無職の黒人青年ドリス。介護の知識も経験もなく、失業保険目当てで「不採用通知をくれ」と言う一見ふざけた態度のドリスをフィリップは採用します。ドリスは慣れない介護に悪戦苦闘。しかしフィリップを特別視せずフラットな態度をみせるドリスに、フィリップも徐々に心を開いていきます。

からだが不自由な大富豪と、五体満足だけど貧困の中で育ったスラム街出身の青年。正反対の環境にいたふたりが出会い、かけがえのない絆を深めていく様子を描く、実話に基づくヒューマンドラマです。

ドリスを「スラム街のゴロツキじゃないか」と非難する富豪仲間に、「彼だけは私を平等に扱う。経験や過去は関係ない」と言い放つフィリップ。同情されるのにウンザリしていたフィリップは、金持ちだろうが障害があろうが関係なく、驚くほどストレートに接してくるドリスに、今まで周りにいた人とは違う人間性を感じたのではないでしょうか。

手が動かないのに携帯を渡す。投げ返せないのに雪合戦。悪気がないドリスの態度やブラックジョークに呆れながらも、気が付けばフィリップも一緒になって自分の障害をネタにするように。はしゃぎ合うふたりの姿はまるで毒舌漫才コンビか、いたずら好きな少年同士。ドリスのおかげで好きな人とのデートにもこぎつけます。いつも不機嫌な顔をしていた気難し屋のフィリップの笑顔が増えるたびに、見ているこちらもクスクス笑いながら、心がどんどんあったかくなっていくのを感じます。

ドリスもフィリップから教養や知性を学び、オペラやパラグライダーなど、生まれて初めての貴重な体験を次々とすることに。お互いが刺激しあって変化していく様子が、とても気持ちよく描かれています。優しさあふれるラストも素晴らしい!

First Posted : 2014.9.18 on "clover&"

作品情報
監督・脚本:エリック・トレダノ/オリヴィエ・ナカシュ
出演:フランソワ・クリュゼ/オマール・シー
〔2011年/フランス/1時間53分〕

 

PROFILE

上原千都世

ライター、コラムニスト。
エンターテイメント情報誌「weeklyぴあ」映画担当を経てフリーに。エンタメ界での経歴、子育てなどの経験を活かして現在は「エンタメ・暮らし・子ども」などをキーワードに雑誌・書籍・web問わず執筆。「こども映画プラス」 「ウレぴあ総研」などに寄稿。

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